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Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

評価-★★★★★(奇跡)

ユルスナールの靴

ろくに連絡も寄越さない息子の様子をうかがうのと、年末のバカンス気分を少しでも堪能しようというつもりで、パリまで駆けつけてくれた母が、帰りの飛行機のなかで読もうと思ってるの、といいながら差しだしてみせた一冊。もう読んだ? と聞かれ、読んでない…

L'étranger

初めてこの本を読んだ日のことは決して忘れることができない。その頃まだ高校生だった私は、学校の帰りに紀伊國屋書店新宿南店に寄り、京王線の中でわくわくしながらこの本を開いた。そして気がついたときには、自分の降りるべき駅を通り過ぎてしまっていた…

感情教育

サイードが『知識人とは何か』の中で紹介していた「知識人を扱った小説」の最後の一冊。ツルゲーネフの『父と子』とジョイスの『若い藝術家の肖像』を越えて、ようやくこのフロベールの『感情教育』に辿り着いた。 感情教育 上 (河出文庫) 作者: ギュスター…

若い藝術家の肖像

サイードが『知識人とは何か』のなかで紹介していた「知識人が登場する小説」は三作、ツルゲーネフの『父と子』とフロベールの『感情教育』、そしてこのジェイムズ・ジョイスの『若い藝術家の肖像』だった。既読だったのは喜ばしいことにツルゲーネフのみで…

知識人とは何か

ジュンク堂書店新宿店で実施している「ディアスポラ文学フェア」から抜き出してきた一冊。有名なタイトルながらも未読だったので、良い機会を与えてもらったと思い読んでみた。 知識人とは何か (平凡社ライブラリー) 作者: エドワード・W.サイード,Edward W.…

不穏の書、断章

ポルトガル文学を求めて辿り着いた、フェルナンド・ペソアの世界。初ペソアながらも、この詩人に今まで出会えなかったことを後悔するほどの内容だった。ペソアの書くものには、ただならぬ吸引力がある。電車の中と就寝前の数時間が素晴らしく豊かなものにな…

移動祝祭日

ヘミングウェイの描いた、まだ二十代だった頃に体験したパリの想い出の数々。最晩年に書かれた遺作にして最高傑作。新訳版。 移動祝祭日 (新潮文庫) 作者: アーネストヘミングウェイ,高見浩 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/01/28 メディア: 文庫 購入…

白の闇

仕事の都合というかプライベートの都合というか、プライベートをも浸食する仕事の都合というか、まったく本を読む時間を持てなかった。半月も本を読めずにいると発狂しそうになる。だから今日仕事が一段落して、喫茶店に駆け込んだ時にこの本を開けた喜びは…

比類なきジーヴス

ユーモア文学の古典的傑作として名高い、P・G・ウッドハウスのジーヴスもの。国書刊行会による「ウッドハウス・コレクション」の第一回配本である。 比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション) 作者: P.G.ウッドハウス,Pelham Grenville Wodehouse,森…

ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし

松籟社が刊行している大変魅力的なシリーズ「東欧の想像力」第三回配本。第一弾はダニロ・キシュ(セルビア)の『砂時計』で、ボフミル・フラバル(チェコ)の『あまりにも騒がしい孤独』が続き、本書、ミロラド・パヴィチ(セルビア)の『帝都最後の恋』、…

ドン・キホーテ

長かった。年末の宴会続きや体調不良も重なって、通読するだけで一ヶ月もかかってしまった。しかも読み終えた今でも、この本が自分の中で完結した気が全くしない。むしろようやく、この本が秘める広大な世界のスタート地点に立つことが出来た、という心境で…

独身者の機械

吉祥寺の古本屋「百年」でとうとう手に入れた、欲しい本リスト最上段の主、ミッシェル・カルージュ。8400円という値段で購入したが、ネットの相場が20000円を容易く越えることを考えると、決して高くはない。むしろ安い。 独身者の機械 未来のイヴ、さえも・・…

イカロスの飛行

古本屋で高いお金を払って手に入れた、レーモン・クノーの最後の長篇小説。読みたい気持ちが高まり過ぎて、とうとう読んでしまった。 イカロスの飛行 (ちくま文庫) 作者: レーモン・クノー,Raymond Queneau,滝田文彦 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1991…

ロクス・ソルス

『モレルの発明』と並んで、ブラザーズ・クエイが『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』を作成する際に参照したもう一つの小説。ずっと前から耳にしていたけれども、なかなか手に取るきっかけのなかった一冊とようやく向き合った。 ロクス・ソルス (平…

モレルの発明

ボルヘスの盟友ビオイ=カサーレスが1940年に発表した、伝説の奇書。ボルヘスによって「完璧な小説」と激賞されたSF風小説。 モレルの発明 (叢書 アンデスの風) 作者: アドルフォビオイ・カサーレス,清水徹,牛島信明 出版社/メーカー: 書肆風の薔薇 発売日: …

シュルレアリスムとは何か

「シュルレアリスム」という言葉をどうも理解していないと感じていた時に、書店の棚から抜き出した一冊。講演形式になっているから、読みやすそうだと思って手に取り、買ったそのままの足で喫茶店に入って読み耽った。 シュルレアリスムとは何か (ちくま学芸…

吉野弘詩集

本について文章を書くと、その本に与えられる記憶が固定化されてしまう。自分が感じたことの記録が残せるという長所はあるにせよ、固定化は時に僕を臆病にする。詩集について何かを書くのが恐ろしいのだ。もしかしたら明日寝る前にちらりと読む詩が、これま…

プレヴェール詩集

足繁く通っていた古本屋が閉店する。その悲しい知らせを受けて行った閉店セールの中で見つけた本。 プレヴェール詩集 作者: ジャックプレヴェール,小笠原豊樹 出版社/メーカー: マガジンハウス 発売日: 1991/03 メディア: 単行本 購入: 1人 この商品を含むブ…

A2Z

先日『ぼくは勉強ができない』を絶賛したばかりだが、個人的に最高傑作だと思っているのは実はこの『A2Z』だ。 A2Z (講談社文庫) 作者: 山田詠美 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2003/01/15 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 25回 この商品を含むブログ…

イリアス

先頃紹介した『オデュッセイア』の10年以上も前に起こった、トロイア戦争の物語。 イリアス〈上〉 (岩波文庫) 作者: ホメロス,Homeros,松平千秋 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1992/09/16 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 53回 この商品を含むブロ…

ハムレット

『オセロー』、『リア王』、『マクベス』と共に「四大悲劇」の一つとして数えられている作品、『ハムレット』。 シェイクスピア全集 (〔23〕) (白水Uブックス (23)) 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1983/01 …

スナーク狩り

ルイス・キャロルによる、『鏡の国のアリス』よりも更にマイナーな、詩のような小説のような文学作品。 スナーク狩り 作者: ルイスキャロル,河合祥一郎,ヘンリーホリデイ,Lewis Carroll,Henry Holiday,高橋康也 出版社/メーカー: 新書館 発売日: 2007/07 メ…

天使も踏むを恐れるところ

正直、これほどの小説に出会えるとまでは想像もしていなかった。ちくま文庫から出ているジェイン・オースティンの素晴らしい新訳で一気に有名になった、中野康司の初期の訳業。 天使も踏むを恐れるところ 作者: E.M.フォースター,E.M. Forster,中野康司 出版…

あなたまかせのお話

レーモン・クノーの活動を概観できる、彼の死後フランスで出版された未刊行作品集。 あなたまかせのお話 (短篇小説の快楽) 作者: レーモンクノー,Raymond Queneau,塩塚秀一郎 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2008/10 メディア: 単行本 購入: 1人 クリ…

ボヴァリー夫人

古典的名著と呼ばれる小説は、思い立った時に読んだ方がいい。読んだことを後悔することはほとんどないと言っていいし、それが名著である由縁が判らないことも、また、ほとんどないからだ。 ボヴァリー夫人 (新潮文庫) 作者: フローベール,生島遼一 出版社/…

ふたりのロッテ

好きな作家の本を読めるというのは、なんて幸せなことなんだろう。しかも、それがまだ未読のものであるなら尚更だ。とはいえ、いつもこの調子で読んでいたら、すぐに未読のものはなくなってしまう。ジレンマだ。もったいない。とうとう読んでしまった。 ふた…

伝奇集

文学通を気取るのならば、ラテンアメリカは避けられない。だが僕がこれまでに読んだラテンアメリカの本はガルシア・マルケスの『戒厳令下チリ潜入記』だけだった。「ラテンアメリカ文学」ではなく「ラテンアメリカの本」と書いたのは、ガルシア・マルケスの…

モモ

エンデによる奇跡の名作。大人が読むべき、何度でも読み返すべき、児童文学。 モモ (岩波少年文庫(127)) 作者: ミヒャエル・エンデ,大島かおり 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2005/06/16 メディア: 新書 購入: 41人 クリック: 434回 この商品を含むブロ…

走れメロス

太宰の代表作と目される、「走れメロス」を含む短編集。 走れメロス (新潮文庫) 作者: 太宰治 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2005/02 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 124回 この商品を含むブログ (171件) を見る 太宰治『走れメロス』新潮文庫、1967…

肉体の悪魔

あまりにも早熟な若者が描いた、悲劇。 肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫) 作者: ラディゲ,中条省平 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2008/01/10 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 16回 この商品を含むブログ (36件) を見る レーモン・ラディゲ(中条省平…

夜間飛行

中学生の頃に読んで感動した記憶のある作品を、機会を得て再読した。 夜間飛行 (新潮文庫) 作者: サン=テグジュペリ,堀口大學 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1956/02/22 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 75回 この商品を含むブログ (161件) を見る ア…

ポトマック

小説なのかどうかもわからない。散文詩と呼ぶのがが一番適当なように思える。 ポトマック―渋澤龍彦コレクション 河出文庫 作者: ジャンコクトー,Jean Cocteau,渋澤龍彦 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2000/02 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 4…

空の青み

「バタイユが好きだ」と書くと、自分をヒロイックに見せるような、あるいは村上龍に傾倒しているような、あるいは衒学的なような、少しばかり嫌な感覚に襲われる。でも好きだ。バタイユ。 空の青み (河出文庫) 作者: ジョルジュ・バタイユ,伊東守男 出版社/…

新アラビア夜話

『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』で知られる、スティーヴンスンの描いた物語集。 新アラビア夜話 (光文社古典新訳文庫) 作者: ロバート・ルイススティーヴンスン,Robert Louis Stevenson,南條竹則,坂本あおい 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2007/09/06…

華氏451度

本を読むことが禁じられた時代を描いた、ブラッドベリの長編。 華氏451度 (ハヤカワ文庫SF) 作者: レイブラッドベリ,Ray Bradbury,宇野利泰 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2008/11 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 115回 この商品を含むブログ (10…

木曜日だった男

以前から気になっていた一冊が光文社古典新訳文庫から発売されたと聞き、早速手に取ってみた。 木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫) 作者: チェスタトン,南條竹則 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2008/05/13 メディア: 文庫 購入: 8人 クリッ…

赤と黒

他のことをしなくてはならない時にも、続きを想像してしまう作品と久しぶりに出会った。 赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1) 作者: スタンダール,野崎歓 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2007/09/06 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 26回 この商…

ボートの三人男

過去に筑摩書房版『世界ユーモア文学全集』のために訳出された、イギリスの傑作ユーモア小説。 ボートの三人男 (中公文庫) 作者: ジェローム・K.ジェローム,丸谷才一 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2010/03/25 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: …

カラマーゾフの兄弟

ドストエフスキーの描いた最高傑作であり、あらゆる文学の頂点とも呼ぶべき小説。昨今話題の新訳。 カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫) 作者: ドストエフスキー,亀山郁夫 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2006/09/07 メディア: 文庫 購入: 29人 クリ…

デミアン

明暗二つの世界を揺れ動き、運命を求める男の物語。 デミアン (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1951/12/04 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 322回 この商品を含むブログ (104件) を見る ヘルマン・ヘッセ(高橋健二訳)…

ちょっとピンぼけ

世界的に有名な戦時記者が記した、第二次世界対戦の記録。 ちょっとピンぼけ (文春文庫) 作者: ロバート・キャパ,川添浩史,井上清一 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 1979/05 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 44回 この商品を含むブログ (56件) を見る…

父と子

19世紀のロシア文学を牽引した一人、ツルゲーネフの代表作。 父と子 (新潮文庫) 作者: И.С.ツルゲーネフ,工藤精一郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1998/05/04 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (9件) を見る イワン・セルゲ…

かわいい女・犬を連れた奥さん

チェーホフが晩年に著した短編を集めたもの。そこにはユーモアを越えた何かがある。 かわいい女・犬を連れた奥さん (新潮文庫) 作者: チェーホフ,小笠原豊樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1970/11/30 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 15回 この商品…

シカゴ育ち

柴田元幸が「自分が今まで訳した本の中で最良の一冊」と評した、ステュアート・ダイベックの傑作短編集。 シカゴ育ち (白水Uブックス―海外小説の誘惑 (143)) 作者: スチュアート・ダイベック,柴田元幸 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2003/07 メディア: 新…

地下鉄のザジ

言葉の魔術師レーモン・クノーによるユーモラスな小説。 地下鉄のザジ (中公文庫) 作者: レーモン・クノー,生田耕作 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 1974/10/10 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 75回 この商品を含むブログ (53件) を見る レーモ…

文体練習

フランス発、あらゆる文体を集めた得難い本。 文体練習 作者: レーモンクノー,Raymond Queneau,朝比奈弘治 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 1996/11 メディア: 単行本 購入: 15人 クリック: 532回 この商品を含むブログ (144件) を見る レーモン・クノ…

可笑しい愛

「現代最高の作家」ミラン・クンデラによる、唯一の短編集。 可笑しい愛 (集英社文庫) 作者: ミランクンデラ,Milan Kundera,西永良成 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2003/09 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 29回 この商品を含むブログ (17件) を見る…

存在の耐えられない軽さ

見事な手法と哲学によって彩られた芸術作品。 存在の耐えられない軽さ (集英社文庫) 作者: ミランクンデラ,Milan Kundera,千野栄一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 1998/11 メディア: 文庫 購入: 30人 クリック: 312回 この商品を含むブログ (162件) を見る…

高慢と偏見

恋愛小説とは何か。その答えは、200年前に我々の前に現れていた。 高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1) 作者: ジェインオースティン,Jane Austen,中野康司 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2003/08 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 37回 この商品を含…

さらば愛しき女よ

他人を心から愛するとは、一体どういうことなのか。あまりにも悲劇的な、チャンドラーの傑作。 さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2)) 作者: レイモンド・チャンドラー,清水俊二 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1976/04 メディア: 文庫 購…