Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

評価-★★★★★(奇跡)

ドン・キホーテ

長かった。年末の宴会続きや体調不良も重なって、通読するだけで一ヶ月もかかってしまった。しかも読み終えた今でも、この本が自分の中で完結した気が全くしない。むしろようやく、この本が秘める広大な世界のスタート地点に立つことが出来た、という心境で…

独身者の機械

吉祥寺の古本屋「百年」でとうとう手に入れた、欲しい本リスト最上段の主、ミッシェル・カルージュ。8400円という値段で購入したが、ネットの相場が20000円を容易く越えることを考えると、決して高くはない。むしろ安い。 独身者の機械 未来のイヴ、さえも・・…

イカロスの飛行

古本屋で高いお金を払って手に入れた、レーモン・クノーの最後の長篇小説。読みたい気持ちが高まり過ぎて、とうとう読んでしまった。 イカロスの飛行 (ちくま文庫) 作者: レーモン・クノー,Raymond Queneau,滝田文彦 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1991…

ロクス・ソルス

『モレルの発明』と並んで、ブラザーズ・クエイが『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』を作成する際に参照したもう一つの小説。ずっと前から耳にしていたけれども、なかなか手に取るきっかけのなかった一冊とようやく向き合った。 ロクス・ソルス (平…

モレルの発明

ボルヘスの盟友ビオイ=カサーレスが1940年に発表した、伝説の奇書。ボルヘスによって「完璧な小説」と激賞されたSF風小説。 モレルの発明 (叢書 アンデスの風) 作者: アドルフォビオイ・カサーレス,清水徹,牛島信明 出版社/メーカー: 書肆風の薔薇 発売日: …

シュルレアリスムとは何か

「シュルレアリスム」という言葉をどうも理解していないと感じていた時に、書店の棚から抜き出した一冊。講演形式になっているから、読みやすそうだと思って手に取り、買ったそのままの足で喫茶店に入って読み耽った。 シュルレアリスムとは何か (ちくま学芸…

吉野弘詩集

本について文章を書くと、その本に与えられる記憶が固定化されてしまう。自分が感じたことの記録が残せるという長所はあるにせよ、固定化は時に僕を臆病にする。詩集について何かを書くのが恐ろしいのだ。もしかしたら明日寝る前にちらりと読む詩が、これま…

プレヴェール詩集

足繁く通っていた古本屋が閉店する。その悲しい知らせを受けて行った閉店セールの中で見つけた本。 プレヴェール詩集 作者: ジャックプレヴェール,小笠原豊樹 出版社/メーカー: マガジンハウス 発売日: 1991/03 メディア: 単行本 購入: 1人 この商品を含むブ…

A2Z

先日『ぼくは勉強ができない』を絶賛したばかりだが、個人的に最高傑作だと思っているのは実はこの『A2Z』だ。 A2Z (講談社文庫) 作者: 山田詠美 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2003/01/15 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 25回 この商品を含むブログ…

イリアス

先頃紹介した『オデュッセイア』の10年以上も前に起こった、トロイア戦争の物語。 イリアス〈上〉 (岩波文庫) 作者: ホメロス,Homeros,松平千秋 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1992/09/16 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 53回 この商品を含むブロ…

ハムレット

『オセロー』、『リア王』、『マクベス』と共に「四大悲劇」の一つとして数えられている作品、『ハムレット』。 シェイクスピア全集 (〔23〕) (白水Uブックス (23)) 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1983/01 …

スナーク狩り

ルイス・キャロルによる、『鏡の国のアリス』よりも更にマイナーな、詩のような小説のような文学作品。 スナーク狩り 作者: ルイスキャロル,河合祥一郎,ヘンリーホリデイ,Lewis Carroll,Henry Holiday,高橋康也 出版社/メーカー: 新書館 発売日: 2007/07 メ…

天使も踏むを恐れるところ

正直、これほどの小説に出会えるとまでは想像もしていなかった。ちくま文庫から出ているジェイン・オースティンの素晴らしい新訳で一気に有名になった、中野康司の初期の訳業。 天使も踏むを恐れるところ 作者: E.M.フォースター,E.M. Forster,中野康司 出版…

あなたまかせのお話

レーモン・クノーの活動を概観できる、彼の死後フランスで出版された未刊行作品集。 あなたまかせのお話 (短篇小説の快楽) 作者: レーモンクノー,Raymond Queneau,塩塚秀一郎 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2008/10 メディア: 単行本 購入: 1人 クリ…

ボヴァリー夫人

古典的名著と呼ばれる小説は、思い立った時に読んだ方がいい。読んだことを後悔することはほとんどないと言っていいし、それが名著である由縁が判らないことも、また、ほとんどないからだ。 ボヴァリー夫人 (新潮文庫) 作者: フローベール,生島遼一 出版社/…

ふたりのロッテ

好きな作家の本を読めるというのは、なんて幸せなことなんだろう。しかも、それがまだ未読のものであるなら尚更だ。とはいえ、いつもこの調子で読んでいたら、すぐに未読のものはなくなってしまう。ジレンマだ。もったいない。とうとう読んでしまった。 ふた…

伝奇集

文学通を気取るのならば、ラテンアメリカは避けられない。だが僕がこれまでに読んだラテンアメリカの本はガルシア・マルケスの『戒厳令下チリ潜入記』だけだった。「ラテンアメリカ文学」ではなく「ラテンアメリカの本」と書いたのは、ガルシア・マルケスの…

モモ

エンデによる奇跡の名作。大人が読むべき、何度でも読み返すべき、児童文学。 モモ (岩波少年文庫(127)) 作者: ミヒャエル・エンデ,大島かおり 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2005/06/16 メディア: 新書 購入: 41人 クリック: 434回 この商品を含むブロ…

走れメロス

太宰の代表作と目される、「走れメロス」を含む短編集。 走れメロス (新潮文庫) 作者: 太宰治 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2005/02 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 124回 この商品を含むブログ (171件) を見る 太宰治『走れメロス』新潮文庫、1967…

肉体の悪魔

あまりにも早熟な若者が描いた、悲劇。 肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫) 作者: ラディゲ,中条省平 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2008/01/10 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 16回 この商品を含むブログ (36件) を見る レーモン・ラディゲ(中条省平…

夜間飛行

中学生の頃に読んで感動した記憶のある作品を、機会を得て再読した。 夜間飛行 (新潮文庫) 作者: サン=テグジュペリ,堀口大學 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1956/02/22 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 75回 この商品を含むブログ (161件) を見る ア…

ポトマック

小説なのかどうかもわからない。散文詩と呼ぶのがが一番適当なように思える。 ポトマック―渋澤龍彦コレクション 河出文庫 作者: ジャンコクトー,Jean Cocteau,渋澤龍彦 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2000/02 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 4…

空の青み

「バタイユが好きだ」と書くと、自分をヒロイックに見せるような、あるいは村上龍に傾倒しているような、あるいは衒学的なような、少しばかり嫌な感覚に襲われる。でも好きだ。バタイユ。 空の青み (河出文庫) 作者: ジョルジュ・バタイユ,伊東守男 出版社/…

新アラビア夜話

『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』で知られる、スティーヴンスンの描いた物語集。 新アラビア夜話 (光文社古典新訳文庫) 作者: ロバート・ルイススティーヴンスン,Robert Louis Stevenson,南條竹則,坂本あおい 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2007/09/06…

華氏451度

本を読むことが禁じられた時代を描いた、ブラッドベリの長編。 華氏451度 (ハヤカワ文庫SF) 作者: レイブラッドベリ,Ray Bradbury,宇野利泰 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2008/11 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 115回 この商品を含むブログ (10…

木曜日だった男

以前から気になっていた一冊が光文社古典新訳文庫から発売されたと聞き、早速手に取ってみた。 木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫) 作者: チェスタトン,南條竹則 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2008/05/13 メディア: 文庫 購入: 8人 クリッ…

赤と黒

他のことをしなくてはならない時にも、続きを想像してしまう作品と久しぶりに出会った。 赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1) 作者: スタンダール,野崎歓 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2007/09/06 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 26回 この商…

ボートの三人男

過去に筑摩書房版『世界ユーモア文学全集』のために訳出された、イギリスの傑作ユーモア小説。 ボートの三人男 (中公文庫) 作者: ジェローム・K.ジェローム,丸谷才一 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2010/03/25 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: …

カラマーゾフの兄弟

ドストエフスキーの描いた最高傑作であり、あらゆる文学の頂点とも呼ぶべき小説。昨今話題の新訳。 カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫) 作者: ドストエフスキー,亀山郁夫 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2006/09/07 メディア: 文庫 購入: 29人 クリ…

デミアン

明暗二つの世界を揺れ動き、運命を求める男の物語。 デミアン (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1951/12/04 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 322回 この商品を含むブログ (104件) を見る ヘルマン・ヘッセ(高橋健二訳)…