Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

配架-ドイツ文学

ゲーテさん こんばんは

唐突に、ゲーテの評伝。じつは前々から読みたいと思っていた本で、ゲーテが生きた時代のドイツに興味があるのだ。これはじつは、文学というよりも音楽に由来する関心で、当時のドイツにはモーツァルトやベートーヴェン、シューベルトがいたし、わたしが熱狂…

アンティゴネ

読み終えたのはずいぶん前なのに、書く時間を見つけられないまま放っておいてしまったブレヒト。この本が思い出させてくれたマヤコフスキーの『戦争と世界』を先に記事にしてしまったほどだ。ソフォクレスの『アンティゴネ』に対する、ブレヒト流の改作・翻…

複製技術時代の芸術

なんて難しい本だったことだろう。いま自分がこの本を読み終えた、いや、まがりなりにも読み終えたことにしようとしているのが、ちょっと信じられないくらいだ。何度も何度も題名を目にした経験から、ようやく手にとった一冊。ページを最後まで繰りはしたが…

水妖記

先日『ペレアスとメリザンド』を読んだことをきっかけに、感想を書いていなかったことを思い出した一冊。 水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1) 作者: フーケー,柴田治三郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1978/05/16 メディア: 文庫 購入: 3人 クリ…

ガリレオの生涯

沈黙していた期間、わたしは読書時間のほとんどを科学読み物に費やしていた。「科学読み物」とわたしが呼ぶのは、科学そのものについての最先端の論文などではなく(そんなものは読めない)、それらを平易な内容に噛みくだき、典型的文系であるわたしのよう…

リヒテンベルク先生の控え帖

二ヶ月ほどかけてショーペンハウアーの『読書について』を何度も読んでいたら、彼が頻繁に引用する作家たちの名前をリストアップできるようになっていた。ホラティウス、アリストテレス、セネカ、そしてリヒテンベルクである。最初の三人はギリシア・ローマ…

読書について

更新をやめてからおよそ一年が経ったので、これを機にブログを再開したいと思う。この一年間、本を読んでいなかったわけではもちろんないのだが、読書量はかなり減っており、選書傾向も以前とは幾分異なっていた。おかげで、以前なら気にも留めていなかった…

ヘッセの読書術

最近、読書という行為そのものを主題にした書物をたくさん読んでいる。その最中に思い出した、ずっと昔に読んだ一冊。詳しく内容を覚えている部分もいくつかあったが、とても楽しい再読となった。 ヘッセの読書術 作者: ヘルマンヘッセ,フォルカーミヒェルス…

若きウェルテルの悩み

アナトール・フランスの『神々は渇く』のなかで効果的に使われているのを見てから、読みたい読みたいと思っていた一冊。古典作品は関心が向いたら手に取れ、むしろ関心が向くまで手に取るな、を信条としているわたしとしては、今がそのタイミングだった。 若…

ホフマン短篇集

オットー・ランクの『分身』を読んでから読みたいと思っていたホフマン。初めてホフマンを読むにあたってどこから始めようかと考えていた時、以前友人からもらったこの短篇集を思い出した。彼はこの本を古本屋で見つけて嬉々として購入したところ、家に帰っ…

ほらふき男爵の冒険

ジャリの『超男性』に「ほらふき男爵」こと、ミュンヒハウゼン男爵の名が登場したのを機に手に取った一冊。古典はこういう機会を活用しないとなかなか読まない。 ほらふき男爵の冒険 (岩波文庫) 作者: ビュルガー,Guttfried August B¨urgar,新井皓士 出版社/…

魔法のカクテル

エンデの描く、悪い魔術師と悪い魔女の話。魔法のカクテルは悪の限りを尽くすために作られ、それを食い止めようとするのは、動物最高評議会から派遣されたでぶ猫とリューマチ持ちのカラス。 エンデ全集〈12〉魔法のカクテル 作者: ミヒャエルエンデ,Michael …

スナーク狩り(エンデ)

ルイス・キャロルの『スナーク狩り』を、ドイツ語に翻訳したのはミヒャエル・エンデだった。 エンデ全集〈11〉スナーク狩り―L・キャロルの原詩による変奏 作者: ミヒャエルエンデ,高橋康也,丘沢静也 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2002/04/18 メディア:…

ふたりのロッテ

好きな作家の本を読めるというのは、なんて幸せなことなんだろう。しかも、それがまだ未読のものであるなら尚更だ。とはいえ、いつもこの調子で読んでいたら、すぐに未読のものはなくなってしまう。ジレンマだ。もったいない。とうとう読んでしまった。 ふた…

ミヒャエル・コールハースの運命

後期ロマン派に分類されるクライストの代表作。 ミヒャエル・コールハースの運命―或る古記録より (岩波文庫) 作者: クライスト,吉田次郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1941/06/28 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 15回 この商品を含むブログ (11件…

影をなくした男

なんてこった、読み終わってしまった。深夜2時にパラパラと捲り始め、気付いたら4時になってしまっていた。 影をなくした男 (岩波文庫) 作者: シャミッソー,Adelbert von Chamisso,池内紀 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1985/03/18 メディア: 文庫 購…

笑いを売った少年

ミヒャエル・エンデ、エーリヒ・ケストナーと共に、ドイツでは三大児童文学作家と遇されているジェイムス・クリュスの代表作。 笑いを売った少年 作者: ジェイムスクリュス,James Kr¨uss,森川弘子 出版社/メーカー: 未知谷 発売日: 2004/03 メディア: 単行本…

モモ

エンデによる奇跡の名作。大人が読むべき、何度でも読み返すべき、児童文学。 モモ (岩波少年文庫(127)) 作者: ミヒャエル・エンデ,大島かおり 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2005/06/16 メディア: 新書 購入: 41人 クリック: 434回 この商品を含むブロ…

香水

革命前夜のフランスを舞台に描かれた、ドイツの作家による奇想天外な物語。 香水―ある人殺しの物語 (文春文庫) 作者: パトリックジュースキント,Patrick S¨uskind,池内紀 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2003/06 メディア: 文庫 購入: 6人 クリック: 36…

ファウスト

ゲーテが描いた、ゲーテにしか描けなかった「ファウスト伝説」。 ファウスト〈第1部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ) 作者: ヨハーン・ヴォルフガングゲーテ,Johann Wolfgang Goethe,池内紀 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2004/05 メディア: 文庫 購入:…

シッダールタ

成道前の釈尊が悟りに至る過程を描いた、ヘッセの芸術。 シッダールタ (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1959/05/04 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 45回 この商品を含むブログ (120件) を見る ヘルマン・ヘッセ(高橋…

デミアン

明暗二つの世界を揺れ動き、運命を求める男の物語。 デミアン (新潮文庫) 作者: ヘッセ,高橋健二 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1951/12/04 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 322回 この商品を含むブログ (104件) を見る ヘルマン・ヘッセ(高橋健二訳)…

車輪の下で

ドイツを代表する作家、ヘルマン・ヘッセの代表作、新訳。翻訳家はベルンハルト・シュリンクを日本に紹介した松永美穂。 車輪の下で (光文社古典新訳文庫) 作者: ヘッセ,松永美穂 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2007/12/06 メディア: 文庫 購入: 1人 クリ…

点子ちゃんとアントン

ケストナーによる、世界最良の道徳教本。 点子ちゃんとアントン (岩波少年文庫) 作者: エーリヒケストナー,Erich K¨astner,池田香代子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2000/09/18 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 24回 この商品を含むブログ (26件…

エーミールと三人のふたご

『エーミールと探偵たち』の、「つづきのような、つづきではないような物語」。 エーミールと三人のふたご (岩波少年文庫) 作者: エーリヒケストナー,ヴァルター・トリアー,Erich K¨astner,池田香代子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2000/07/18 メディ…

小さな男の子の旅

子どもの頃を忘れてはいけない。 小さな男の子の旅―ケストナー短編 (ショート・ストーリーズ) 作者: エーリヒケストナー,堀川理万子,Erich K¨astner,榊直子 出版社/メーカー: 小峰書店 発売日: 1996/02 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る …

一杯の珈琲から

またしても「ご機嫌」な、ケストナーの作品。 一杯の珈琲から (創元推理文庫 508-3) 作者: E.ケストナー,小松太郎 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 1975/03 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (17件) を見る エーリヒ・ケス…

エーミールと探偵たち

誰かに「好きな作家は誰?」と聞かれたら、僕はきっと彼を選ぶのだろう。 エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 (018)) 作者: エーリヒ・ケストナー,ヴァルター・トリアー,池田香代子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2000/06/16 メディア: 単行本 購入: 6…

雪の中の三人男

ケストナー、やばい。想像していた以上に、やばい。この人の作品にハズレは無いのだろうか。 雪の中の三人男 (創元推理文庫 508-2) 作者: エーリヒ・ケストナー,小松太郎 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 1971/11/26 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック…

飛ぶ教室

また天才に出会ってしまった。最初に彼を児童文学作家と呼んだのは一体誰だろう?しかしそんなことはどうだっていい。一つだけ言えるのは、そいつは『飛ぶ教室』を読まなかったということだ。 飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫) 作者: ケストナー,丘沢静也 出版…