Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

配架-フランス文学

エセー1

死ぬまでに絶対に読みたいと思っている本がいくつかある。いや、じつはいくつもある。そのリストには古典に数えられている作品がほとんどすべて入っていて、いっこうに短くなる気配を見せないどころか、日に日に肥大化してきているのだが、わたしの方針とし…

神々は渇く

最近、何度も読み返したくなるようなぶっ飛んだ小説に出会ってないなあ、と考えていた矢先、きました、ぶっ飛んだ小説。こんなに夢中になってページを繰った読書体験は、じつに久しぶりな気がする。ぶっ飛んだ。 神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3) 作者: アナ…

死刑囚最後の日

プラトンを読んでいたときに思い出した一冊。すでに部分的にはフランス語で読んでいたのだが、最後まで読みたくなったので手に取った。 死刑囚最後の日 (岩波文庫 赤 531-8) 作者: ヴィクトル・ユーゴー,豊島与志雄 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1982/…

地獄

向田邦子のエッセイ『父の詫び状』のなかで、魅力が語られていた一冊。日本でもフランスでも、今ではほとんど忘れられてしまった作家、バルビュスが1908年に発表した作品。 地獄 (岩波文庫 赤 561-1) 作者: アンリ・バルビュス,田辺貞之助 出版社/メーカー: …

嘔吐

パリのジュンク堂で定価の二倍以上の金額を出してまで手に入れた一冊。たいして厚い本でもないのに、ようやく読み終えたのは日本に帰国してからのことだった。 嘔吐 新訳 作者: J‐P・サルトル,鈴木道彦 出版社/メーカー: 人文書院 発売日: 2010/07/20 メディ…

シネロマン

年末にまとめて購入した三冊のロジェ・グルニエのうち、最後の一冊。ほかの二冊の短篇集(『フラゴナールの婚約者』と『夜の寓話』)とは異なり、これは手に入った唯一の長編小説である。 シネロマン 作者: ロジェグルニエ,Roger Grenier,塩瀬宏 出版社/メー…

夜の寓話

年末にまとめ買いをしたロジェ・グルニエ第二弾。先日の『フラゴナールの婚約者』と同じく短篇集だが、こちらはちょうど私が望む短篇集の厚さで、小気味よく読み進めることができた。 夜の寓話 作者: ロジェグルニエ,Roger Grenier,須藤哲生 出版社/メーカー…

フラゴナールの婚約者

年末にパリのブックオフで大人げないほどの大人買いをした日本語書籍のうちの一冊。ロジェ・グルニエのフランス語書籍は残念ながらほとんどが絶版になってしまっていて、日本語のほうが遙かに見つけやすくなってしまっている。そのブックオフにはどういうわ…

麗しのオルタンス

日本に帰国した暁にはすぐにも読まねば、と思っている本たちの膨大なリストを片手に、パリのジュンク堂とブックオフを渉猟していた際に、うっかり見つけてしまった一冊。日本の自宅の本棚で、まだそのページを開かれることすらなく書棚に突きささったままに…

Apparition et autres contes de l'étrange

『Une Vie(邦題:女の一生)』を大学の授業で扱ってから無性に読みたくなったモーパッサンの短篇集。2ユーロで買えるガリマール社のお得なシリーズの一冊。 Apparition Et Autr Cont (Folio 2 Euros) 作者: G. Maupassant 出版社/メーカー: Gallimard Educa…

La Gloire de mon père

『Marius』三部作を読んでから、小説も読んでみたいと思っていたマルセル・パニョル。たまたま大学の教授がこの本を推薦してくれたので、手にとってみた。 La Gloire De Mon Pere 作者: Marcel Pagnol 出版社/メーカー: Distribooks Inc 発売日: 2004/09/30 …

Satané Dieu !

先日紹介した『Le C. V. de Dieu』の著者が書いた、もう一つの神さまの話。前作で「この世の終わりを準備する」と言い放った神さまは、ここではどんなことをするのか。 Satane Dieu (Ldp Litterature) 作者: J. L. Fournier 出版社/メーカー: Livre de Poche…

Le C. V. de Dieu

2008年にフェミナ賞を受賞したことも記憶に新しい、ジャン=ルイ・フルニエのユーモア小説。フェミナ賞の受賞作『Où on va, papa ?』がいかにも重たそうなテーマを扱っていたので敬遠していたのだが、この『Le C. V. de Dieu』はタイトルからして既にユーモ…

Contes 1, 2, 3, 4

イヨネスコがエチエンヌ・ドゥルセールという画家と共に作り上げた、三歳以下の子どもたちのための絵本。もともと四分冊だった四本の掌編を一冊にまとめたもの。 Contes 1, 2, 3, 4 作者: Eugene Ionesco 出版社/メーカー: Editions Gallimard 発売日: 2009/…

La Cantatrice chauve suivi de La Leçon

先日カミュを読みながら「不条理(absurde)」という言葉の意味を再考してみたが、何故自分がこれほどまでにこの言葉に反感を覚えるのかは上手く説明できなかった。そういうわけで紋切り型の表現としては「実存主義(existentialisme)」と「シュルレアリス…

César

マルセル・パニョルによるマリユス三部作、とうとう最後の一作。結局この三部作を読み終えるのに丸々一月も費やしてしまった。 Cesar 作者: Marcel Pagnol 出版社/メーカー: Distribooks Inc 発売日: 2001/01 メディア: マスマーケット この商品を含むブログ…

Fanny

パリを離れてナントにやってきたものの、インターネット接続がなかなかうまくいかずに更新が滞ってしまっている。ようやく今回紹介できるのはマルセル・パニョルによるマリユス三部作の第二作目。前作『Marius』から二年、マリユスが旅立った後のマルセイユ…

Marius

パリの語学学校で出会ったスイス人の友人が教えてくれた、南仏マルセイユの作家マルセル・パニョルによる戯曲。南仏訛りが強調される部分以外は平易なフランス語で書かれているため、私でも十分理解することができた。 Marius 作者: Marcel Pagnol 出版社/メ…

Le Petit Prince

もう何度目なのか数えることもできない。岩波書店の内藤櫂訳で初めて読んだ時から今までに、様々な翻訳者の手によるこの本を比べてみたり、何故か英訳で読んでみたりもした(ちなみにそのときの記事)。考えてみると随分と遠回りしたものだが、とうとう、ど…

ソドム百二十日

登場する変態の数があらゆる文学の中でも最も多いと噂される、サドの未完の小説。ずいぶん前に読んだ巖谷國士の『シュルレアリスムとは何か』の中では、ある種のユートピア文学としても紹介されていた。 ソドム百二十日 (河出文庫) 作者: マルキ・ドサド,マ…

感情教育

サイードが『知識人とは何か』の中で紹介していた「知識人を扱った小説」の最後の一冊。ツルゲーネフの『父と子』とジョイスの『若い藝術家の肖像』を越えて、ようやくこのフロベールの『感情教育』に辿り着いた。 感情教育 上 (河出文庫) 作者: ギュスター…

煙滅

翻訳不可能と喧伝されたペレックの傑作、"La Disparition"の邦訳がとうとう刊行。その名も『煙滅』。 煙滅 (フィクションの楽しみ) 作者: ジョルジュペレック,Georges Perec,塩塚秀一郎 出版社/メーカー: 水声社 発売日: 2010/01 メディア: 単行本 購入: 1人…

幼女と煙草

サミュエル・ベケットに才能を見出されミラン・クンデラの絶賛を受けたという、手を伸ばさずにはいられなくなるような評価を与えられた現代フランス作家ブノワ・デュトゥールトゥルの初めての邦訳作品。 幼女と煙草 作者: ブノワ・デュトゥールトゥル,赤星絵…

愛書家鑑

最高の休日の過ごし方とは、古本屋をぶらぶらしながら選んだ本を、喫茶店に入ってすぐに読むことである。しかもそれが薄い本で、その勢いのまま読み終えることができたらもう何も言うことはない。 書痴談義 作者: P.ルイス,生田耕作 出版社/メーカー: 白水社…

超男性

ミッシェル・カルージュの『独身者の機械』がまるで見つからないので、溜飲を下げるつもりで手に取った一冊。『澁澤龍彦文学館 独身者の箱』にも収められた、元々は「小説のシュルレアリスム」シリーズとして刊行されていたアルフレッド・ジャリ。 超男性 (…

イカロスの飛行

古本屋で高いお金を払って手に入れた、レーモン・クノーの最後の長篇小説。読みたい気持ちが高まり過ぎて、とうとう読んでしまった。 イカロスの飛行 (ちくま文庫) 作者: レーモン・クノー,Raymond Queneau,滝田文彦 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1991…

アフリカの印象

『ロクス・ソルス』と共にレーモン・ルーセルの代表作に数えられる、奇想の一大博覧会。2007年に刊行されたばかりの平凡社ライブラリー版。 アフリカの印象 (平凡社ライブラリー) 作者: レーモンルーセル,Raymond Roussel,岡谷公二 出版社/メーカー: 平凡社 …

マルタン君物語

江戸川乱歩が『第二の顔』を絶賛したことによって知られる、奇想家マルセル・エイメの短篇集。 マルタン君物語 (ちくま文庫) 作者: マルセルエーメ,江口清 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1990/04/24 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る …

長靴をはいた猫

巖谷國士の『シュルレアリスムとは何か』を読んでからずっと、「おとぎばなし」を読みたいと思っていた。ルーセルの『ロクス・ソルス』を読んだことでその想いが一層強まり、手に取った一冊。 長靴をはいた猫 (河出文庫) 作者: シャルルペロー,渋澤龍彦 出版…

ロクス・ソルス

『モレルの発明』と並んで、ブラザーズ・クエイが『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』を作成する際に参照したもう一つの小説。ずっと前から耳にしていたけれども、なかなか手に取るきっかけのなかった一冊とようやく向き合った。 ロクス・ソルス (平…