Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

オイディプス王・アンティゴネ

ギリシア三大詩人、ソフォクレスの「オイディプス王」を収録した戯曲です。

『海辺のカフカ』を読んでから気になっていたため、初めて手に取ることとなりました。 

オイディプス王・アンティゴネ (新潮文庫)

オイディプス王・アンティゴネ (新潮文庫)

 

ソポクレス(福田恒存訳)『オイディプス王アンティゴネ新潮文庫、1984年。


「お前は母と交わり、人々が正視するに堪えがたい子孫を世に示し、その上、自分を生んでくれた父親を殺すであろう」という、多分アポロン神託の内、最も有名な予言が登場する作品が「オイディプス王」であり、その悲劇の終わりにはこんな言葉が出てきます。
「人の運命は計りがたい、誰にせよ、最後の日を迎えるまでは、それを幸福な男と呼んではならぬ、苦悩の巷を脱して、黄泉の国に赴くまでは。」

他にも「生きとし生けるもののうち、わが身の幸を誇り得る者など、どこにもおりはせぬ。」など、「幸せ」に対する悲劇的な姿勢が散見できます。

続編である「アンティゴネ」も悲劇ですが、こちらは「オイディプス王」とは異なり、非常に人為的にもたらされる悲劇です。故に、あらゆる神に対する信仰のない僕でもスラスラと読めました。

この二篇の戯曲はストーリーの続いたものですが、もたらされる悲劇の有様は全く次元の違うものです。
一冊にこの二篇が収録されているのは、とても興味深いことだと感じました。 

オイディプス王・アンティゴネ (新潮文庫)

オイディプス王・アンティゴネ (新潮文庫)