クリスマス・キャロル
世界一有名なクリスマスを扱った作品の、新訳。
チャールズ・ディケンズ(池央耿訳)『クリスマス・キャロル』光文社古典新訳文庫、2006年。
現在的なクリスマスを作り上げたのはディケンズだ。「イギリスのクリスマスを創始した男」ディケンズ。これもおそらく世界一有名な守銭奴スクルージが、どのような物語を演出するのか。これも周知の通りである。
現代を生きる我々が、この名著からどれだけのことを汲み取れるだろう。近しい人への思いやりや尊敬、本当に価値のあるものは何か。この本を読んで、心を動かされない人は絶対にいない。それが古典であり、名著であり、ディケンズだ。
この新訳は児童文学として扱われることの多い本書を、大人が読むために訳したものであろう。よって、児童文学の訳書としては完全にアウトだ。光文社古典新訳文庫のスローガン「いま、息をしている言葉で。」も当てはまらない気がする。何種類もの邦訳が出ている『クリスマス・キャロル』に大人向けのちょっと面白い訳が出た、と考えれば良いだろう。決して物語が損なわれている訳ではない。訳者の語彙の豊富さは、現代においてなかなか見られるものではない。