Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

パルプ

世界一の不良パンク爺による世界一下品な探偵小説。

パルプ (新潮文庫)

パルプ (新潮文庫)

 

チャールズ・ブコウスキー(柴田元幸訳)『パルプ』新潮文庫、1995年。


探偵小説と呼べる要素は、主人公の職業が探偵だということだけです。競馬と酒に溺れた中年デブ。ハードボイルドな世界を求められる要素は何一つありません。でも、面白い。

「世界の大半が狂っちまってるのだ。狂ってない奴らは、プンプン怒ってる。狂っても怒ってもいない奴らはただの阿呆だ。これじゃどうしようもない」


「死ぬほど退屈な連中。そこらじゅうにいる。そいつらがまた、死ぬほど退屈な連中を繁殖させる。なんたるホラーショー。世界じゅうそういう奴らがウジャウジャしてる」

なんたるパンク。社会への不満を下品に、率直に、代弁してくれている。
下品な言葉、つまり、「FUCK」ほど翻訳の難しい単語は無いんじゃないでしょうか。柴田元幸の苦心が伺えて、また楽しいです。僕は原書も読みました。やはり放送禁止用語のオンパレードで、これはこれで笑える。難しい単語が多いというわけでもないのに、翻訳の難しい小説というのはなかなか無いです。柴田元幸は本当に凄いと思いました。

どうでもいいのかもしれませんが、この終わり方はないんじゃないか?
ブコウスキーだから許されている気がします(笑)。    

パルプ (新潮文庫)

パルプ (新潮文庫)

 
Pulp: A Novel

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