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「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

ピギー・スニードを救う話

職場の女性に勧められ、手にとった九月の新刊。 

ピギースニードを救う話 (新潮文庫)

ピギースニードを救う話 (新潮文庫)

 

ジョン・アーヴィング(小川高義訳)『ピギー・スニードを救う話』新潮文庫、2007年。


アーヴィングの名前や作品は何度となく耳にしていたものの、実際に読んだのは初めてだった。

長編を読んでいないもぐりが語るのは気が進まないが、著者唯一の短編集らしい。

読後の感想としては、読みやすさは村上春樹のようで(実際に村上春樹はアーヴィングの著書を訳している)、プロットの立て方はミラン・クンデラのようだと思った。クンデラに関してはこの短編集の表題作、「ピギー・スニードを救う話」に特化したものなのかもしれないが、何せ長編を読んでいないからわからない。ただ少なくとも「小説」という作品を作り上げるまでの工程を惜しみ無く語るという点で、共通しているといえるだろう。

村上春樹が好む理由もよくわかる。彼が訳した『熊を放つ』や、高校生の頃に読んだ村山由佳の『天使の卵』にて紹介されていた『ホテル・ニューハンプシャー』、さらに本書に掲載された「ペンション・グリルパルツァー」(この短編は“ガープの処女作”と銘打たれている)の作者が主人公の『ガープの世界』。読むべき本が増えて、大変嬉しい。

同僚に感謝しなければ。

ピギースニードを救う話 (新潮文庫)

ピギースニードを救う話 (新潮文庫)

 

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