羅生門・鼻
芥川の作品群の内、「王朝もの」八篇を収めたもの。
他の出版社を探せば良かったのかもしれないが、注が多すぎて非常に読み辛かった。「王朝もの」ということもあり、必要な注も多かったが、不必要なものはその倍もある。いくら字が大きくとも、これでは芥川独自のテンポが台無しだ。
作品としては「芋粥」、「袈裟と盛遠」、「俊寛」が面白かった。「袈裟と盛遠」は短い作品だが、男女の意識の違いが克明に描かれた傑作で、特に気に入った。
「私は夫の為に死ぬのではない。私は私の為に死のうとする。私の心を傷つけられた口惜しさと、私の体を汚された恨めしさと、その二つの為に死のうとする。ああ、私は生き甲斐がなかったばかりではない。死に甲斐さえもなかったのだ」(「袈裟と盛遠」90ページ)
作品はやっぱり面白いので、注が気にならなければ是非。