白痴
私がバタイユを愛読していることを知った友人が、勧めてくれた本。
短編集である。以下、収録作品。
「いずこへ」
「白痴」
「母の上京」
「外套と青空」
「私は海をだきしめていたい」
「戦争と一人の女」
「青鬼の褌を洗う女」
ラストの三作がもの凄いことになっていた。特に「私は海をだきしめていたい」の完成度は、ずば抜けている。
「私はいつも神様の国へ行こうとしながら地獄の門を潜ってしまう人間だ」(「私は海をだきしめていたい」より、136ページ)
バタイユと同じ意味で、ロマンティシズムに溢れていた。頽廃的なのを自ら認めながらも、何一つとして諦めきれていない。
「私は「一番」よいとか、好きだとか、この一つ、ということが嫌いだ。なんでも五十歩百歩で、五十歩と百歩は大変な違いなんだと私は思う。大変でもないかも知れぬが、ともかく五十歩だけ違う。そして、その違いとか差というものが私にはつまり絶対というものに思われる。私はだから選ぶだけだ」(「青鬼の褌を洗う女」より、194~195ページ)
友人に見透かされているようで、悔しくすらなった。響いた。でも、君も同じなのだろう。
これを読んでも「そんなに響かなかったよ」と言えるような人間に、なりたいものだ。