幼童殺戮
堀口大學の訳した様々な作家の短編をまとめたアンソロジー、『短篇物語』の第一巻。
堀口大學訳『短篇物語1 幼童殺戮』書肆山田、1989年。
全三巻のアンソロジーで、一冊が非常に薄く手に取りやすい。横田稔の装画も素敵。
以下、収録作品。
★☆☆ジュール・シュペルヴィエル「ヴィオロン声の少女」
☆☆☆モーリス・メーテルリンク「幼童殺戮」
★★☆ギヨーム・アポリネール「詩人のナプキン」
★★☆ジュール・シュペルヴィエル「沖の小娘」
シュペルヴィエルは詩的で幻想的、アポリネールも詩的だがもっとリアル、メーテルリンクは予想に反してグロテスクで残虐だった。
「ヴィオロン声の少女」はタイトルの通り、声がヴァイオリンの響きを持っている少女の話。「沖の小娘」は最近光文社から「海に住む少女」という題で新訳も出ている、海に浮かぶ町に住む孤独な少女の話だ。
「泡よ、わたしのまわりの泡よ、何時になったら、おまえは固いものになるのか?」(「沖の小娘」より、95ページ)
アポリネールの「詩人のナプキン」では詩人たちがナプキンを使い回し、その汚れが次第に絵柄になっていく。「幼童殺戮」はスペイン兵に占領された村で、二歳以下の幼児たちが殺されていく話だ。横田稔の画が凄い。首を切り落とされた赤子を、母が泣きながら抱いている。正直、メーテルリンクが何を思ってこの短篇を著したのかわからない。
短篇が四つか五つしか入っていない分、ページが贅沢に使われていて挿絵も多い。「幼童殺戮」の凄惨な図と「沖の小娘」の可愛らしい少女の絵があるだけで、短篇の印象は全然違ったものになる。じっくり読める、豊かな短篇集。大変楽しい。
追記(2014年10月6日):なぜか2巻目だけがAmazonにも登録されていたので、ここにリンクを貼りつけておく。
<読みたくなった本>
シュペルヴィエル『沖の小娘』
シュペルヴィエル『ノアの方舟』
→堀口大學訳、青銅社刊行の短篇集。
メーテルリンク『青い鳥』
→チルチルとミチルに会いたくなった。
- 作者: メーテルリンク,Maurice Maeterlinck,堀口大学
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/03/22
- メディア: 文庫
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アポリネール『虐殺された詩人』
アポリネール『若きドン・ジュアンの冒険』
→アポリネールの長編。