読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

Satané Dieu !

配架-フランス文学 評価-★★☆☆☆(好き) 言語-フランス語の本 テーマ-ユーモア文学

 先日紹介した『Le C. V. de Dieu』の著者が書いた、もう一つの神さまの話。前作で「この世の終わりを準備する」と言い放った神さまは、ここではどんなことをするのか。

Satane Dieu (Ldp Litterature)

Satane Dieu (Ldp Litterature)

 

Jean-Louis Fournier, Satané Dieu !, Éditions Stock, Le Livre de Poche n°30867, 2005.


 前にも書いたとおり『Satané Dieu!』というタイトルは、直訳すれば「ろくでもない神さま」。ただ、この「Satané」という形容詞は文字通り悪魔の首領を意味する「Satan」に由来している。「神さま」を意味する「Dieu」という語に付ける形容詞としては、いかにも相応しくないのが面白い。

 実のところ、この『Satané Dieu!』と『Le C. V. de Dieu』との間には何の連関性もなかった。主人公が神さまで、天空で退屈しきっていることは同じだが、前作との時間的な連続性はまったくない。それぞれ別個の、独立した作品である。

「Quand je vois Adam avac sa casquette américaine, dans son 4 X 4 or métalisé, à côté d'une Éve décolorée en pantalon de cuir, en train de remorquer un scooter des mers, j'ai honte d'avoir fait ça.」(pp.10-11)
「野球帽をかぶったアダムが金メッキの4WDを乗りまわして、その横で髪を染めて革パンツを履いたイヴがジェットスキーを引っ張っているのを見たとき、私はこいつらを創ったことが恥ずかしくなったんだ」

 神さまは聖ペトロとともに、ゴージャスな高層ビルの最上階に住んでいる。雲の上に突き出た最上階から、階下に間借りしている人間たちの様子をのぞき見しては、地上の楽園を創ったことを後悔し、彼らの生活を台無しにしてやろうと決意する。

「Vous avez bien réussi le paradis, il n'y a pas de raison que vous loupiez l'enfer.」(p.11)
「天国を創るのにこれほど成功したんだから、地獄だって問題なく創れますよ」

 これは2ページほどの断章が延々と150ページまで続くという、とんでもない本だ。ほとんど全ての章が幸せそうな人びとの描写から始まり、以下の文章が続く。

「Et comme chaque fois qu'il voit des gens heureux, Dieu a la nausée et il réfléchit à ce qu'il pourrait bien inventer.」(p.17)
「幸せそうな人びとを見るたびに神さまは吐き気を覚え、何を発明するべきかを考えた」

 こうして綺麗な衣服には染みがつき、日曜日しかなかった楽園に月曜日が生まれ、ダニだのスズメバチだの肉食獣だのが生み出されていく。一章が短すぎる上に、神さまの思いつくことがいちいちしょうもないので、すぐに飽きる。50ページを過ぎたあたりからは惰性で読み続けた。

「— On a l'impression que vous vous acharnez sur les femmes.
 — C'est normal, je suis un homme.
 — Vous n'êtes pas un homme, vous êtes Dieu.
 — D'accord, mais je suis du masculin.」(p.80)
「「女性に対して厳しすぎやしませんか」
 「男なんだから、当然だよ」
 「男ではないでしょう。あなたは神さまなんだから」
 「うん、でもほら、男性名詞だし」」

 たまにキリストから掛かってくる電話が面白い。金の無心をしたかと思ったら、警察に身柄を拘束されたりしている。

「Il y a eu encore un appel de votre fils, dit saint Pierre.
 — Il a laissé un message?
 — Toujours le même : « Père, père, pourquoi m'as-tu abandonné ?»」(p.135)
「「また息子さんから電話がかかってましたよ」と聖ペトロは言う。
 「何か言ってた?」
 「いつもと同じです。「父よ、父よ、なぜ我を見捨てたもうや」」

 日記や詩集を一気に読んでも残るものが少ないように、もうちょっとゆっくり味わうべきだったのかもしれない。一章の短さが没頭を許さず、まとめて読むと次から次へと忘れていく。ゆっくり味わうのならフェルナンド・ペソアの詩集でも読んでいる方がずっと良い。

Au lieu de commencer par le paradis, vous auriez dû faire directement l'enfer, conclut saint Pierre, admiratif.」(p.119)
「「天国を創りはじめるより、直接地獄を創るべきでしたね」聖ペトロは感心しながら結論した」

 どうも『Le C. V. de Dieu』を書いたときに思いついた小ネタを、捨てるのがもったいなくて一冊にまとめたような代物にしか思えない。ところどころに面白いアイディアがあるのは前作同様だが、残念ながらそれを理由にわざわざ推そうとまでは思えない。一作目で満足したままでいる方が無難かもしれない。

Satane Dieu (Ldp Litterature)

Satane Dieu (Ldp Litterature)