Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

評価-★★★★☆(大満足)

ミラノ 霧の風景

色々とやらなければならないことが貯まってしまって、まったく本を読めずにいた。これじゃあいかん、と思ってなにかを開いてみても、文体であるとか句読点の置き方、あるいは漢字が開かれているか、といった細かいことにばかり神経が向かってしまって、肝心…

シネロマン

年末にまとめて購入した三冊のロジェ・グルニエのうち、最後の一冊。ほかの二冊の短篇集(『フラゴナールの婚約者』と『夜の寓話』)とは異なり、これは手に入った唯一の長編小説である。 シネロマン 作者: ロジェグルニエ,Roger Grenier,塩瀬宏 出版社/メー…

Apparition et autres contes de l'étrange

『Une Vie(邦題:女の一生)』を大学の授業で扱ってから無性に読みたくなったモーパッサンの短篇集。2ユーロで買えるガリマール社のお得なシリーズの一冊。 Apparition Et Autr Cont (Folio 2 Euros) 作者: G. Maupassant 出版社/メーカー: Gallimard Educa…

La Gloire de mon père

『Marius』三部作を読んでから、小説も読んでみたいと思っていたマルセル・パニョル。たまたま大学の教授がこの本を推薦してくれたので、手にとってみた。 La Gloire De Mon Pere 作者: Marcel Pagnol 出版社/メーカー: Distribooks Inc 発売日: 2004/09/30 …

La Cantatrice chauve suivi de La Leçon

先日カミュを読みながら「不条理(absurde)」という言葉の意味を再考してみたが、何故自分がこれほどまでにこの言葉に反感を覚えるのかは上手く説明できなかった。そういうわけで紋切り型の表現としては「実存主義(existentialisme)」と「シュルレアリス…

Marius

パリの語学学校で出会ったスイス人の友人が教えてくれた、南仏マルセイユの作家マルセル・パニョルによる戯曲。南仏訛りが強調される部分以外は平易なフランス語で書かれているため、私でも十分理解することができた。 Marius 作者: Marcel Pagnol 出版社/メ…

Le Petit Prince

もう何度目なのか数えることもできない。岩波書店の内藤櫂訳で初めて読んだ時から今までに、様々な翻訳者の手によるこの本を比べてみたり、何故か英訳で読んでみたりもした(ちなみにそのときの記事)。考えてみると随分と遠回りしたものだが、とうとう、ど…

聖母の贈り物

一冊の本をこれほど長い期間読み続けたことは久しくなかったように思える。これほど多くの場所へ連れ回したことも。この本を最初に開いた場所は新宿で、それから栃木の祖母の家で何篇か読み、最後の一篇を読み終えたのはパリだった。今月の頭にフランスに来…

大学の歴史

『不純なる教養』を読んで知った、大学という概念を捉えなおすための一冊。最近人文系の本ばかり読んでいるのは、世界観に入り込む必要のない人文書の気安さが心地良いから。でも、こう人文書続きの生活を送っていると無性に文学が読みたくなってもくる。素…

バートルビー 偶然性について

ジョルジョ・アガンベンの論文「バートルビー 偶然性について」と、その主題であるメルヴィルの短編「バートルビー」の新訳を同時に収録した、大変気の利いた一冊。主題となる小説の短さが可能にした素晴らしい構成であり、さらに訳者による「バートルビーの…

転落

最近諸事情から読書に時間を割くことがほとんどできないでいる。そんな時に手に取った、慌ただしい読書を徹底的に拒む本。おそらく最も手に取ったはいけなかった類いの書物。 転落・追放と王国 (新潮文庫) 作者: カミュ,大久保敏彦,窪田啓作 出版社/メーカー…

煙滅

翻訳不可能と喧伝されたペレックの傑作、"La Disparition"の邦訳がとうとう刊行。その名も『煙滅』。 煙滅 (フィクションの楽しみ) 作者: ジョルジュペレック,Georges Perec,塩塚秀一郎 出版社/メーカー: 水声社 発売日: 2010/01 メディア: 単行本 購入: 1人…

幼女と煙草

サミュエル・ベケットに才能を見出されミラン・クンデラの絶賛を受けたという、手を伸ばさずにはいられなくなるような評価を与えられた現代フランス作家ブノワ・デュトゥールトゥルの初めての邦訳作品。 幼女と煙草 作者: ブノワ・デュトゥールトゥル,赤星絵…

愛書家鑑

最高の休日の過ごし方とは、古本屋をぶらぶらしながら選んだ本を、喫茶店に入ってすぐに読むことである。しかもそれが薄い本で、その勢いのまま読み終えることができたらもう何も言うことはない。 書痴談義 作者: P.ルイス,生田耕作 出版社/メーカー: 白水社…

超男性

ミッシェル・カルージュの『独身者の機械』がまるで見つからないので、溜飲を下げるつもりで手に取った一冊。『澁澤龍彦文学館 独身者の箱』にも収められた、元々は「小説のシュルレアリスム」シリーズとして刊行されていたアルフレッド・ジャリ。 超男性 (…

アフリカの印象

『ロクス・ソルス』と共にレーモン・ルーセルの代表作に数えられる、奇想の一大博覧会。2007年に刊行されたばかりの平凡社ライブラリー版。 アフリカの印象 (平凡社ライブラリー) 作者: レーモンルーセル,Raymond Roussel,岡谷公二 出版社/メーカー: 平凡社 …

萩原朔太郎詩集

わがホームタウン吉祥寺を代表する詩人が、薦めてくれた朔太郎。彼は萩原朔太郎の詩集に出会った日、それをマクドナルドにて徹夜で読み、そして翌朝、辞表を携えて当時の職場へ向かったそうだ。「俺は詩人なんだ」と気付かされたと、彼は笑いながら話してく…

百年の孤独

ラテンアメリカの文学を世に知らしめ魔術的リアリズムの時代を開くこととなった、現代の世界文学を牽引する記念碑的作品。新潮社の発行している雑誌『考える人』の2008年春号で「海外の長篇小説ベスト100」の頂点に輝いたことも記憶に新しい。 百年の孤独 (O…

ドラゴンは踊れない

友人の強い薦めで手に取ったカリブ海文学、現代トリニダード・トバゴを代表する作家、ラヴレイス。 ドラゴンは踊れない 作者: アール・ラヴレイス,中村和恵 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2009/02/11 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含む…

すばらしい新世界

ジョージ・オーウェルの『一九八四年』を読んでから、読みたくなったディストピア文学。『一九八四年』が書かれた1949年よりも17年早い、1932年に書かれた本である。 すばらしい新世界 (講談社文庫) 作者: ハックスリー,Aldous Huxley,松村達雄 出版社/メー…

一九八四年

村上春樹の『1Q84』が発売されると決まった時に、ちょうど版権が切れてしまっていたディストピア文学を代表する小説。ようやく出ました、新訳版。 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久 出版社/メーカー: 早川書房 発…

幻・方法

1959年に刊行された吉野弘の第二詩集の復刻版。第二、とは言っても第一詩集の『消息』は少部数の自費出版本で、この詩集『幻・方法』にその三分の二が再録されている。 幻・方法 (愛蔵版詩集シリーズ) 作者: 吉野弘 出版社/メーカー: 日本図書センター 発売…

アポリネール詩集

高校生のある時、フランス文学を勉強したいと思いついた。学校の帰りに一人、紀伊國屋書店の新宿南店に行き、フランス人である気がする作家の本を沢山買ったことを覚えている。コレットの『青い麦』、『モーパッサン短篇集』、そして『アポリネール詩集』だ…

詩のこころを読む

日本の詩が気になって仕方がないのだが、なかなかどこから手をつけたら良いのかわからない。そんな時に出会った岩波ジュニア新書の一冊。 詩のこころを読む (岩波ジュニア新書) 作者: 茨木のり子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1979/10/22 メディア: 新…

二十億光年の孤独

現代の大詩人、谷川俊太郎のデビュー詩集。1952年にこの詩集が刊行された時、谷川はまだ21歳だった。 二十億光年の孤独 (集英社文庫 た 18-9) 作者: 谷川俊太郎,川村和夫,W.I.エリオット 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2008/02/20 メディア: 文庫 購入: 1…

詩人からの伝言

今月刊行されたメディアファクトリー文庫の一冊。まさか自分がMF文庫を買う日が来るとは、思っていなかった。 詩人からの伝言 (MF文庫ダ・ヴィンチ) 作者: 田村隆一/長薗安浩 出版社/メーカー: メディアファクトリー 発売日: 2009/06/23 メディア: 文庫 購…

創造者

今月謎の文庫化を遂げた奇跡の一冊。友人たちと予想していた装幀が見事に的中して、我々を喜ばせてくれた。 創造者 (岩波文庫) 作者: J.L.ボルヘス,Jorge Luis Borges,鼓直 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2009/06/16 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック…

ぼくは勉強ができない

山田詠美の代表作とも言える、連作短篇集。最近山田詠美ばかり読んでいるのは仕事の都合なのだが、彼女の作品を読んでいるとそんなことは忘れてしまう。 ぼくは勉強ができない (新潮文庫) 作者: 山田詠美 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1996/03/01 メディ…

枯木灘

「岬」から二年後の紀州を描いた、「秋幸三部作」の第二作目。 枯木灘 (河出文庫 102A) 作者: 中上健次 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 1980/06 メディア: 文庫 購入: 17人 クリック: 131回 この商品を含むブログ (111件) を見る 中上健次『枯木灘』…

キャッチャー・イン・ザ・ライ

前に春樹訳の『グレート・ギャツビー』を読んでから、ずっと読み直したいと思っていたサリンジャー。『1Q84』が予想以上に良かったので手に取ってみた。 キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション) 作者: J.D.サリンジャー,J.D. Salinger…