Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

無産大衆神髄

記念すべき第二弾は矢部史郎・山の手緑のゴールデンコンビが贈る『無産大衆神髄』。

無産大衆神髄

無産大衆神髄

 

矢部史郎・山の手緑『無産大衆神髄』河出書房新社、2001年1月。


2001年に出たにも関わらず、未だに初版という愛すべき本。
この本の内容を一言で説明するのは非常に困難です。トピックは多岐にわたり、しかも必ずしも答えを提示してくれないからです(笑)。
以下目次。

 銭湯的階級の自律性―カラカラ編集部へのインタビュー
 なぜ人を殺してはいけないのか
 高円寺ネグリ系、たまには他人の運動について語る
 ニーズ・サービス・スマイル0円
 ムーヴメントのすすめ
 高円寺ネグリ系、運動を紹介しようとして失敗
 自家風呂・自家用車・自己表現
 高円寺ネグリ系、ニーチェを語るはずがついついバタイユ
 市民?誰が!
 グローバリゼーション
 三〇〇〇円以上、一万円以下
 無関心と無視のなかで、しかしなお人間関係に苦しんでいるというわけだ
 高円寺ネグリ系、哲学者と殺人をめぐって激論
 言葉の首都機能
 「学校問題」のだるさ
 週刊誌とテロル
 ベイルート4と軍事のトレンド
 死んだら愛される

この本は雑誌の『現代思想』や『文芸』に掲載された彼らの文章を集めたもので、「興味深い」という意味でも「笑える」という意味でも、面白いものです。

「私たちは毎日運動している。
会社に行ったり、会社をサボったり、他人に絡んだり、絡んできたバカを泣かせたり、いい歳して扶養家族だったり、プイと家出したり、友達の家に居候したり、訳のわからないイイ奴を居候させたり、保険料を払わなかったり、年金の督促状に逆ギレして区役所に抗議したり、電車でキセルしたり、公園に集まって酒を飲んだり、えらそうに説教する「公共広告」とやらを剥がしたり、道端にタバコを捨てたり、食い物を万引きしたり、つもりもなく食い逃げしたり、ようするに、なんだかんだで生活しているということは、それ自体、運動だ。」(本書44ページ)

こんな本です。
日常を懲役に見立てたり、東西線を戦時態勢と言ってみたり、中曽根のハゲを批判してみたり、『SPA!』や『AERA』のやばさを語ってみたり、宮台真司の因業を批判してみたり、そんな本です。
でも、トピックによってはかなり難しいことも言っています。バタイユやネグリ、ガタリの思想が好きな人は大満足できる内容かと思われます。

ちなみに最近このゴールデンコンビは『愛と暴力の現代思想』青土社、2006年4月)という本を出しました。
これも『無産大衆神髄』同様、雑誌に寄稿した文章を集めたもので、5月3日に青山ブックセンター本店で出版記念講演会があります。
興味をもった方は是非↓
http://www.aoyamabc.co.jp/events.html#ao20060503_1

無産大衆神髄

無産大衆神髄