Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

国民国家とナショナリズム

山川出版社から出ている「世界史リブレットシリーズ」。僕にとってこれは諸問題の前提知識を与えてくれる入門書であり、多くの関連書籍を教えてくれるガイドラインでもある。

これから紹介する本はそんなリブレットの中で、上にあげたある種リブレット的な要素を完璧に満たした上で、さらに一定の理解と共感、そして結論を提供してくれるものでもある。つまりこれはリブレットでありながらも一冊の立派な研究書である。

国民国家とナショナリズム (世界史リブレット)

国民国家とナショナリズム (世界史リブレット)

 

谷川稔『国民国家ナショナリズム』山川世界史リブレット、1999年。


「歴史的産物は歴史的文脈から分析されるべきである」。現代において尚勢力を保ち続けるナショナリズム。これは各国のナショナリズムの形態を分析し、その差異を歴史的起源の違いという文脈から説明しようと試みたものである。

主な例はフランスとドイツだ。今年開幕されたワールドカップの各国代表選手を想起してほしい。白人のみで構成されたドイツ代表と、様々な人種の混合チームであるフランス代表。この両国代表の違いは非常に示唆的であると同時に、普仏戦争以降の両国の歴史を振り返ることで説明することができる。

ドイツは神聖ローマ帝国という割拠性の顕著な連合国家を基盤とし、フランスはルイ14世の世紀から既に「理想の六角形(エグザゴーヌ)」と呼ばれる国土の領域的連続性を保持している。その違いがそれぞれの国民意識の在り方を前者は民族・血統主義的、後者は主観・啓蒙主義的なものとして定義することになった。フランスは啓蒙主義から排外主義へと変化もするが、根本においては共和国理念が働き、それが皮肉にも植民地主義的な文脈において援用されることにもなる。

現代日本で語られる「若年層の右傾化」を鑑みるに、これは非常に興味深いことだ。

書くべきことは山ほどあるけれど、自分の頭の中が全く整理されていないので今は止めておきます。

国民国家とナショナリズム (世界史リブレット)

国民国家とナショナリズム (世界史リブレット)