Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

かもめ・ワーニャ伯父さん

チェーホフの四大劇のうち、最初の二作。

かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

 

アントン・チェーホフ(神西清訳)『かもめ・ワーニャ伯父さん』新潮文庫、1967年。


『桜の園・三人姉妹』を先に読んだのは失敗だったかもしれない。チェーホフの四大劇は一つのテーマに対する姿勢の変遷と呼べる、一連の作品群だったからだ。

『かもめ』には人生への絶望が描かれ、それは『ワーニャ伯父さん』において忍耐へと変わる。そして第三作『三人姉妹』では未来への希望へと錬金され、さらに『桜の園』においてそれは確信となる。

その文脈を踏まえると、この変遷のうち私が最も強く惹かれたのが第一作の『かもめ』であったことは、ある意味で自分の未熟さを象徴しているのかもしれない。

絶望と忍耐と希望と確信。『ワーニャ伯父さん』においてソーニャが繰り返す「ほっと息がつけるんだわ!」という科白には、絶望に対する諦めが含まれているのだろう。

何をもってチェーホフは、『かもめ』を喜劇であると断言したのだろう。何度も読み返したい作品群となった。

かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫)

 
桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)