老人と海
アーネスト・ヘミングウェイ(福田恒存訳)『老人と海』新潮文庫、1966年。
ヘミングウェイの描く世界は、本当に入り込みやすい。「かれは年をとっていた」と始まるこの小説の冒頭が、凄まじい情報量を秘めているかのように思えてくる。
リアルでスリリングな描写は、まるで慣性の法則のように読むスピードをどんどん速める。僕はこの小説の大半をあるファミリーレストランで読んだ。ドリンクバーのおかげで飲み物は十分過ぎるほどだったのに、それでも読みながら喉が渇いた。あるいは途中から、飲むことを忘れていたのかもしれない。
本の薄さに似合わない、重厚な本だった。