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「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

ファウスト

ゲーテが描いた、ゲーテにしか描けなかった「ファウスト伝説」。

ファウスト〈第1部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

ファウスト〈第1部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

 

ヨハーン・ヴォルフガング・ゲーテ池内紀訳)『ファウスト』第一部・第二部、集英社文庫ヘリテージシリーズ、2004年。


悪魔メフィストフェレスと神との賭けによって不思議な世界へと誘われるファウスト博士。多々ある「ファウスト伝説」の内、最も有名なゲーテの傑作。

「山のような本を読んでわかったことといえば、せいぜいのところ、この世には苦しんでいる人がどっさりいて、そこにちらほら、幸せ者がいるといったことぐらいだ」(第一部、46ページ)

作中には様々な声が溢れ、一つ一つの言葉が詩的で、わかりにくい。特に第二部。全体を理解することに、大した意味はないのだろう。ストーリーを把握するだけならば、ゲーテを開く必要はない。手塚治虫の『ファウスト』で充分すぎるほどだ。気の向くままに開き、そこにある言葉を噛みしめる。

「名を求めず、志もない者は地の元素にもどるがいい。(中略)功績だけでなく誠実というものが、人を人らしくする」(第二部、319ページ)

読む度に新しい何かが得られる気がする。これはきっとそういう本である。一度通して読んだだけで、評価を決めるのは早計だろう。

「悪魔は何ものかではある。でなければ、どうして存在しておるのか」(第一部、276ページ)

ゲーテの魂が込められた作品。何度も読み返さなければ。 

ファウスト〈第1部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

ファウスト〈第1部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

 
ファウスト〈第2部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

ファウスト〈第2部〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)