青空チェリー
吉祥寺のブックスルーエで力強いポップと共に売られていた本。
普段は手に取らない類の本でも、ルーエで薦められていると読みたくなってしまう。
「平和の象徴はハトじゃなくてソーダ水にすればいいのに」
「ソーダ水は大空に羽ばたかないからなあ」(「ハニィ、空が灼けているよ。」9ページ)
技巧的でもなければ、テーマが珍しいわけでもない。それなのに、不気味なほどに惹かれる。女性の感情が、こちらが気恥ずかしくなるほどストレートにぶつけられる。
収められた三作品の内、「ハニィ、空が灼けているよ。」が秀逸。というか、他の二つがほとんど蛇足に感じられるほど、完成度が高い。秋田出身の作家が描く田園風景と都会との乖離が、物語の根幹を成していて、興味深い。これを読むためだけにも、手に取る価値が十分にある。
あまりにも感情的で、あまりにも感情を掻き乱される小説。他の作品も読んでみるかもしれません。