うたかたの日々
ある女性に薦められて手に取った、ボリス・ヴィアンの小説『日々の泡』を漫画化したもの。
岡崎京子『うたかたの日々』宝島社、2003年。
原典は早川書房版の、伊東守男訳。
傷つけ合うつもりなんか一つも無いのに、僕らはいつの間にか、ボロボロになってしまっている。
ロマンティシズムの溢れる不完全な世界で、ただ彼らの流す涙だけが、現実味を帯び、人間の弱さを暴き、訴えかけてくる。
ボリス・ヴィアンはどうしてこんな小説を書いたのだろう。この小説を好きにならずに済んだなら、僕らはどれだけ幸せだったろう。
「部屋の中にはコランとクロエとイジスがいた。ニコラは泣き始めた。シックとアリーズはもう二度とこの部屋を訪れることはないのだ。それにクロエは一目見て加減が悪くなる一方だと分かったからだ」(186ページより)
恋心は互いに傷つけ合うための、道具なんかじゃない。
わかっているのに、どうしてこんなことになってしまうのだろう。