金槐和歌集
23歳の若さで散った、鎌倉右大臣、源実朝の歌集。
何度開いても新しい発見がある、素晴らしい本。夏の終わりを感じさせる涼しい夜風の吹く、今日のような気候に合う歌を見つけました。
ながむれば衣手さむし夕づく夜さほの川原のあきの初風(秋部、181番)
この歌集に収められた有名な和歌としては、
ほのほのみ虚空にみてる阿鼻地獄行くへもなしといふもはかなし(雑部、652番)
おほ海の磯もとゞろによする波われてくだけてさけて散るかも(雑部、696番)
この二つが挙げられるでしょう。20代で死を迎えたラディゲや実朝の作品に触れると、坂口安吾と同様に、憂鬱になります。
夕月夜おぼつかなきを雲間よりほのかに見えしそれかあらぬか(戀之部、427番)
風吹けば花は雪とぞちりまがふ吉野の山は春やなからむ(春部、83番)
山はさけ海はあせなむ世なりとも君にふた心わがあらめやも(雑部、680番)
季節が移る度に、旅路の途中に、恋の想いの中に、何度でも開きたくなる本。
2007年に重版されたものの、入手困難な状態が続いているので、新刊書店で見つけたら是非手に取って頂きたい。
昨日まで花の散るをぞ惜しみこし夢かうつゝか夏も暮れにけり(夏部、175番)
素晴らしい本です。