モモ
エンデによる奇跡の名作。大人が読むべき、何度でも読み返すべき、児童文学。
- 作者: ミヒャエル・エンデ,大島かおり
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/06/16
- メディア: 新書
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ミヒャエル・エンデ(大島かおり訳)『モモ』岩波少年文庫、2005年。
『モモ』は時間に支配され、それに追われる全ての人々に対して向けられた、素晴らしいメッセージだ。
「光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ。ちょうど虹の七色が目の見えない人にはないもおなじで、鳥の声が耳の聞こえない人にはないもおなじなようにね。でもかなしいことに、心臓はちゃんと生きて鼓動しているのに、なにも感じとれない心をもった人がいるのだ」(236ページ)
単なる諷刺ではなく、単なる警告でもない。これを読んでも心を打たれなくなったら、我々はもう、おしまいだ。ただ、子どもにはわからないかもしれない。大人になってしまった今だからこそ、僕らは『モモ』をこんなにも愛することができるのだ。
ジジの悲痛な叫びは現代を体現している。叶えられた夢と、理想とは違う世界の狭間で、我々は意味を見出すために必死になっているのではないか。
「人生でいちばん危険なことは、かなえられるはずのない夢が、かなえられてしまうことなんだよ」(307ページ)
子どもの頃に読んだことがある人も多いだろう。僕もそんな一人だった。でも、これは子どもには美しい物語としか映らない。大人になった、だらしのない大人になってしまった今だからこそ、『モモ』は特別な意味を持つ。今こそ読んで欲しい。本を読む時間は、働くよりもずっと多くのものを生み出す。『モモ』はそれを忘れてしまった全ての、だらしのない大人に、エンデがくれたメッセージだ。
大人のための児童文学。今こそ、手に取って欲しい。
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