Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

テーマ-野心を持たない書き手

私人

国内にいるあいだに入手した、ブロツキーによるノーベル文学賞受賞講演。荻窪にある馴染みの古本屋さん、ささま書店で購入し、帰りのバスのなか、酔うかもしれないという不安を抱えながら読みはじめ、最後のほうはバスではなく、ブロツキーに酔っていた。こ…

桃の花が咲いていた

もう詩以外のどんなものも読みたくない、というときには、目に入るすべての文字が詩に見えてくる。「ぼくが欲しいのは毒だけだ、詩を飲むに飲むこと」(マヤコフスキー『背骨のフルート』より)。今日は仕事をさっさと切りあげ、日没まで家で煙草を吸ってか…

やがて秋茄子へと到る

まだ一冊あった。以前一読しておいて、そのまま感想を書いていなかった歌集。これの感想を書けずにいたのは、ひとに薦められた本だったからだ。わたしは性格が悪いので、ひとに薦められても、おいそれとすぐにその本を買ったりはしない。このときもそうで、…

ヴェネツィア

アンリ・ド・レニエの『水都幻談』の影響で猛烈に読みたくなった、ヴェネツィアを題材にした文学作品。この本の存在はずっと以前から知っていて、購入したのもいつだったか思い出せないほど昔のことなのだが、きっかけを見つけられないまま、結局ずっと本棚…

不穏の書、断章

ポルトガル文学を求めて辿り着いた、フェルナンド・ペソアの世界。初ペソアながらも、この詩人に今まで出会えなかったことを後悔するほどの内容だった。ペソアの書くものには、ただならぬ吸引力がある。電車の中と就寝前の数時間が素晴らしく豊かなものにな…

ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし

松籟社が刊行している大変魅力的なシリーズ「東欧の想像力」第三回配本。第一弾はダニロ・キシュ(セルビア)の『砂時計』で、ボフミル・フラバル(チェコ)の『あまりにも騒がしい孤独』が続き、本書、ミロラド・パヴィチ(セルビア)の『帝都最後の恋』、…