Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

こころ

谷川俊太郎がいなかったら、現代詩、いや、もっと広義に詩そのものが、われわれにとってこれほど身近なものでなかったことは疑いない。そんなことを考えたのは、たまたま手に入ったこの本が、谷川俊太郎にとっていったい何冊目の詩集なのかを調べようとして…

このごろ、「この詩人がいい、あの詩人もいい」、と、立てつづけに詩集の紹介ばかりしてきたが、いま、そのことをちょっとだけ後悔している。詩というのは、書かれていることの即効性が重視される散文とは大きく異なり、あとになってから響いてくるものも、…

わたしを束ねないで

先日まとめ買いした童話屋詩文庫は三冊、山之口貘の『桃の花が咲いていた』、岸田衿子の『いそがなくてもいいんだよ』、それからこの本、新川和江の『わたしを束ねないで』だった。前者二人は思潮社の現代詩文庫などには入っていないので、ちょっと「発掘」…

イタリアの詩人たち

このごろの更新傾向を見ていただくとすぐにわかるとおり、いま、詩を読むのがとても楽しい。いや、詩はもともと好きなのだが、日本語でよく「現代詩」と呼称される、一見ルールもなにもないように見える言葉たちの自由さに、最近ひたすら驚かされているのだ…

いそがなくてもいいんだよ

しばらくぶりの更新。といってもたかだか四日ぶりで、ふだんのわたしの更新頻度を知るひとは、こいつ気でも狂ったか、と思っていることだろう。ちょっと事情を説明すると、断食月中は、あらゆる会社の勤務時間を短くするように、と、当地の労働法で定められ…

私人

国内にいるあいだに入手した、ブロツキーによるノーベル文学賞受賞講演。荻窪にある馴染みの古本屋さん、ささま書店で購入し、帰りのバスのなか、酔うかもしれないという不安を抱えながら読みはじめ、最後のほうはバスではなく、ブロツキーに酔っていた。こ…

桃の花が咲いていた

もう詩以外のどんなものも読みたくない、というときには、目に入るすべての文字が詩に見えてくる。「ぼくが欲しいのは毒だけだ、詩を飲むに飲むこと」(マヤコフスキー『背骨のフルート』より)。今日は仕事をさっさと切りあげ、日没まで家で煙草を吸ってか…

すみれの花の砂糖づけ

中東に住んでいるひとならだれでも知っているとおり、イスラム教国では先日より断食月(ラマダン)に入っている。お日さまが出ているあいだは飲食禁止、という、あれである。日中はレストランなども閉まってしまうので、わたしのような非イスラム教徒にとっ…

コルカタ

小池昌代という詩人の存在が、わたしのなかで大きくなりつづけている。友人に教えてもらった『通勤電車でよむ詩集』および『恋愛詩集』があまりにすばらしかったので、日本を出るほんとうに直前、そのとき立ち寄ることのできた書店の詩の棚から、彼女の著作…

恋愛詩集

わたしが書店で働くようになったのは18歳のときのこと、その後いろいろと店や担当分野を遍歴し、ついに書店を去ったのは昨年、つまり29歳のときだったが、十年以上もブックカバーをかける側の人間でありつづけたこともあってか、わたしはもう自分の本にはカ…

通勤電車でよむ詩集

先日国内にいたとき、仕事の予定が思ったよりも早く済んだおかげで、次の予定まで、ふいに二時間ほどの空き時間ができた。ふだんのわたしだったら喫茶店に直行、鞄のなかの本を貪るように読むところなのだが、この日鞄に入っていた本たちはどれも内容が重た…

きみを嫌いな奴はクズだよ

刊行されていることは知りつつも、手に取ろうか迷っていた一冊。信頼する友人の「このひと、うまくなってるよ」という一言に後押しされて、結局購入した。書店を出てすぐの喫茶店にて二時間ほどで読み終え、その後、日本から中東に戻る飛行機のなかでもう一…