Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

雑記:好きな作家ベスト100(2011年版)

友人たちと恒例にしている年末行事、公開した途端に後悔するおそるべきリスト、「好きな作家ベスト100」の2011年版を掲示します。 もともとは「好きな作家はだれ? って聞かれると困るよね」という、なにげない会話が発端だったと思います。「何人まで答えて…

地下鉄のザジ

ほんとうにおもしろいものは、何度読んでもおもしろい。もう一度言う。ほんとうにおもしろいものは、何度読んでもおもしろい(しつこい)。初めて読んだのは生田耕作訳(ちなみに、そのときの記事。これを書いたのがかつての自分だなんて、信じたくない)、…

サリー・マーラ全集

1947年の『皆いつも女に甘すぎる』と1950年の『サリー・マーラの日記』をまとめあげた1962年版『サリー・マーラ全集』。そのときに付け加えられた「序文」と、「もっと内密なサリー」について。 サリー・マーラ全集 (レーモン・クノー・コレクション) 作者: …

サリー・マーラの日記

『皆いつも女に甘すぎる』の三年後に刊行された、サリー・マーラ名義のもうひとつの作品。 サリー・マーラ全集 (レーモン・クノー・コレクション) 作者: レーモンクノー,Raymond Queneau,中島万紀子 出版社/メーカー: 水声社 発売日: 2011/10 メディア: 単行…

皆いつも女に甘すぎる

わたしは馬鹿馬鹿しいことに真剣に取り組む人が好きだ。だから、いちばん好きな作家はいつまでたってもレーモン・クノーなのだ。 サリー・マーラ全集 (レーモン・クノー・コレクション) 作者: レーモンクノー,Raymond Queneau,中島万紀子 出版社/メーカー: …

思考の表裏

さきの『ヴァレリー詩集』と同様、『ヴァレリー文学論』が含まれている一冊。『ヴァレリー文学論』と関係があるという時点で、この本は最高評価が確定している。とはいえ、この本の魅力はそれだけではない。 思考の表裏 作者: ポォル・ヴァレリィ,アンドレ・…

ヴァレリー詩集

さきに紹介した『ヴァレリー文学論』をまるごと含んだ、ほるぷ出版「フランス詩人選」の一冊。装幀はピエール・カルダン。前半30ページに「十二詩編」を含んでいるため、別枠で紹介することにした。 ヴァレリー詩集 (1982年) 作者: 堀口大学 出版社/メーカー…

ヴァレリー文学論

本を読んでいて感嘆する一文に出会ったとき、わたしはそのページの端を折る。そして、同じページのうちにいくつもそのような輝ける一文があったときには、ページのもうひとつの端も折る。だが当然ながら、折れる端の数には限界があり、片方のページを二度も…

零度のエクリチュール

感動した。わたしはいま、猛烈に感動している。過去に二度挑戦し、二度とも読破を諦めた本を、おおいに楽しみながら読むことができたからだ。自分が成長した部分も少なくないのかもしれないが、いまならこう断言できる。それはむしろ忍耐力と内容への関心の…

剽窃の弁明

最近、ふたつの言葉の厳密な定義を知りたくて仕方がない。「剽窃」と「模倣」である。前者は悪徳として、後者は敬意の表明として扱われるものなのだろうが、うまく言葉にできない。そこで手に取った一冊。 剽窃の弁明 (エートル叢書) 作者: ジャン=リュック…

性についての探究

アンリ・カルティエ=ブレッソンのエッセイ『こころの眼』に登場したアンドレ・ブルトンの姿を見て、思い出した一冊。シュルレアリストたちが性について語り合った記録である。 性についての探究 作者: アンドレブルトン,野崎歓 出版社/メーカー: 白水社 発…

こころの眼

バルトの『明るい部屋』をきっかけに、手を伸ばした一冊。写真家の友人が、どういうわけかわたしにプレゼントしてくれた本である。しかし、あまりにも昔のことなので、その理由がどうしても思い出せない。つまりそれだけの期間、わたしは進呈された本を棚で…

明るい部屋

先日『短歌の友人』を読んで以来、細部というものの重要性が自分のなかで急上昇している。というより、重要なのは細部だけなのだ、ということに、ようやく気がついたと言うべきだろう。文学作品の「あらすじ」がなんの魅力も持たないのは、そこから細部が削…