2014-01-01から1年間の記事一覧
2011年を最後に更新していなかった、いわゆる「好きな作家ベスト100」を掲載する。公開した途端に後悔する、という、あれである。名前が「好きな作家ベスト100」でなくなったのは、「好きな」というのと「ベスト」というのが、同じことを意味していることに…
すこし前の『It Never Rains』が大変楽しかったので、もっと読みたいと思って手にとったRoger McGoughの詩集。こちらはPenguinグループのなかでも子ども向けのPuffinから刊行されているもので、ほとんどすべての詩が挿絵付きと、大変贅沢な本である。 Slapst…
つい先日の『Little Book of Poems for Young Children』でも紹介されていた、スティーヴンスンによる子どものための詩集。先日の記事では「A Good Play」と「Bed in Summer」、それから「Young Night Thought」の3つを訳出してみたが、ほかにもたくさんいい…
読んだばかりのアンソロジー『Little Book of Poems for Young Children』が教えてくれた何人もの詩人のうち、とくに興味をもったひとりRoger McGoughの、先月刊行されたばかりの最新詩集。 It Never Rains 作者: Roger McGough 出版社/メーカー: Penguin 発…
ヴァージニア・ウルフの『自分だけの部屋』を読んでいたら、クリスティナ・ロセッティなどの魅力的な詩が紹介されていて、そういえば英語で詩を読んだことがない、と気づき、勤め先の書店の棚から抜き出した一冊。いきなりブラウニングやキーツなどを読もう…
アディーチェの新刊『We Should All Be Feminists』を読んだことで、ずいぶん前に、友人から薦められたのを思い出した一冊。薦めてくれたのはアディーチェのときと同じ、マレーシア人の女の子である。彼女は「フェミニズム批評」というものに大変な関心を持…
小笠原豊樹の訃報が届いてから、早くも一週間が経った。一週間前、ちょうど『背骨のフルート』について書いたころであるが、わたしは自分でも驚くほど打ちのめされてしまっていて、ひどく沈んでいたものだ。自然、追悼の気持ちが高まってきて、はからずも生…
英語で読んだ2冊めの本、と書いて、ああ、そういえばアディーチェも読んだんだった、とすぐに思いなおした。でも、あれは50ページほどの講演をまとめたものなので、換算すべきではないだろう。『Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe』…
ブルガーコフの『悪魔物語・運命の卵』を読んでいたときに、「生物の巨大化」という観点からウェルズの『The Food of the Gods(神々の糧)』が紹介されていて、そういえば久しくこの作家に触れていないな、と思い、手にとった一冊。買ったのはずいぶん前の…
今日のニュースで知ったばかりなのだが、小笠原豊樹さんが亡くなられたそうだ。先日から著書の『マヤコフスキー事件』、訳業である「マヤコフスキー叢書」を、このブログでも立て続けに紹介していたところだったので、大きなショックを受けた。『マヤコフス…
職場の友人たちが興奮気味に本の話をしていたので、「なになに、なんの本の話?」と首を突っ込んでみたところ、自分では絶対に手に取らなさそうな本を目の前に突きつけられた。彼女たちは声高に、「あなたこそこの本を読むべきだ」としつこく(失礼)言って…
先日の『ズボンをはいた雲』に引き続き、土曜社刊「マヤコフスキー叢書」の一冊。これはほんとうに気安く手に取れる、奇跡みたいにすばらしいシリーズである。読み終えたのはじつはもう一週間以上も前のことなのだが、先日の『ズボンをはいた雲』同様、これ…
先日『悪魔物語・運命の卵』を読んだことで勢いづき、続けざまに手にとったブルガーコフの作品。この作品はしばしば、先日の「悪魔物語」と「運命の卵」とともに「三部作」と称されるそうだ。 犬の心臓 (KAWADEルネサンス) 作者: ミハイル・A・ブルガーコフ,…
小笠原豊樹の『マヤコフスキー事件』を読んで、俄然興味をかきたてられたマヤコフスキー最初期の詩集のひとつ。そういえばこの本の存在を最初に教えてくれたのは、チャトウィンの『どうして僕はこんなところに』だった。土曜社が今年4月に刊行をはじめた「マ…
あまりのおもしろさに息つく暇もなく読み終えてしまった。300ページを超える本だとは到底信じられないような速さで、終いにはもったいないとさえ思いはじめるほどの速さで読み終えた。これほどのひとは歴史上もう絶対に出てこない。わたしにとっての永遠の憧…
なんて難しい本だったことだろう。いま自分がこの本を読み終えた、いや、まがりなりにも読み終えたことにしようとしているのが、ちょっと信じられないくらいだ。何度も何度も題名を目にした経験から、ようやく手にとった一冊。ページを最後まで繰りはしたが…
チャトウィンの『どうして僕はこんなところに』、そこからミリマノフの『ロシア・アヴァンギャルドと20世紀の美的革命』を読み、いま、ロシアが熱い。余談だが以前友人が同じことを言おうとして「今、ロシアの小説が熱――どう見てもロシアの冬は長く厳しい」…
先日フォースターの『アレクサンドリア』を読み、歴史の楽しさを再確認したことから手に取った一冊。もっと直接的には『オンディーヌ』の「訳者あとがき」、水の精伝説の起源を語った文章のなかに、この作家の著作が紹介されていたのだった。親しみのある名…
ブルース・チャトウィンの『どうして僕はこんなところに』に読みふけって以来、ずっと気になっていた「ロシア・アヴァンギャルド」と呼ばれる芸術運動について書かれた本。ロシア・アヴァンギャルドを芸術史上に位置づけた画期的な一冊。 ロシア・アヴァンギ…
ブルース・チャトウィンの『どうして僕はこんなところに』に紀行文の楽しさを教えてもらったのをきっかけに、以前から読もう読もうと思っていた本をようやく手に取った。読もうと思っていた歳月に比べ、なんと早く読み終えてしまったことだろう。『天使が踏…
心底ふざけた題名を付けてみたが、これは「文学好き」という言葉がもたらすいかにも垢抜けない感じに一石を投じるための記事である。 文学好きは暗い。毎日毎日、本ばかり読んでいて、恋人なんてできた試しがなく、それなのにジェイン・オースティンを読んで…
職場の同僚であるスリランカ人とパレスチナ人の女の子たちから、同時に薦められた本。英語の本を読むのはじつに久しぶりで、正直不安でいっぱいだったのだが、意外にもすんなり読み進められてちょっと興奮した。メキシコ系アメリカ人の書いた、アメリカでは…
今月頭に読んだ『ウッツ男爵』があまりにおもしろかったので、もっとほかのも読んでみたいと思い手に取ったブルース・チャトウィンの作品集。2012年刊行だというのに残念ながらすでに絶版になってしまっているが、まだ在庫している書店を見つけられたので、…
文学作品の良し悪しを判断するうえで大切な要素のひとつに、笑いがある。かつて井上ひさしがどこかで「読者を泣かせることは簡単だが、笑わせることは難しい」と書いていた記憶があるが、ここに端的に表れているように、笑いをもたらすというのはとても高度…
ホメロスには盲人だったという説がある。いや、そもそも「ホメロス」という言葉自体が、ギリシア語で「盲人」を意味するそうだ。2世紀の作家、自称ヘロドトス(あくまで自称であって、あの大著『歴史』を書いた紀元前5世紀のヘロドトスとは別人)の『ホメロ…
突然だが、わたしはマイラバが好きだ。マイラバというのはもちろん、歌手のMy Little Loverのことである。熱狂的なファンというのではなく、「好きだ」と公言するわりにはシングルになっている曲ぐらいしか知らないのだが、いまでもしょっちゅう聴いている。…
児童文学というのは、文学史的にはかなり近代的な分野である。フィリップ・アリエスなんかの研究に詳しいとおり、そもそもの《子ども》という概念は、歴史学の観点から溯ってようやく17世紀ごろに誕生したものであり、それまで彼らは、江國香織の表現を借り…
わたしが初めて書店員として仕事に就いたのは18歳のときのことなので、以後企業や店舗、さらには国まで変えながら、もう十年も「本屋さん」でありつづけている。本についてどんなに詳しくても、金融業や保険会社では役に立たない、つまり、そもそもまるで食…
メーテルリンクの『ペレアスとメリザンド』、フーケの『水妖記』と、水の精にまつわる物語を立て続けに紹介してきたのは、じつはこの本について書きたいからであった。フーケの『水妖記』を直接参照して書かれた、20世紀の傑作戯曲。 オンディーヌ (光文社古…
先日『ペレアスとメリザンド』を読んだことをきっかけに、感想を書いていなかったことを思い出した一冊。 水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1) 作者: フーケー,柴田治三郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1978/05/16 メディア: 文庫 購入: 3人 クリ…