Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

夜のミッキー・マウス

「詩集の読み方がわからない」と、人に言われることがある。僕もそんなに読んでないよ、と言いつつ、「好きなように読めばいいんじゃないかな」と答える。俳句や和歌だって詩なのだし、瞬時に全てが呑み込める詩なんて、そうそうない。詩にまつわる叙情なん…

ちくま日本文学 稲垣足穂

ちくま日本文学シリーズの二冊目として手に取ったのは、稲垣足穂。初タルホ。タルホデビューである。タルホイックな世界に、初めて触れた。 稲垣足穂 [ちくま日本文学016] 作者: 稲垣足穂 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2008/05/08 メディア: 文庫 購入…

のぞき

芸術か猥褻か、と問われたら、間違いなく猥褻に属してしまう官能小説二篇。 のぞき (1979年) (富士見ロマン文庫) 作者: コーニー・オハラ,伊東守男 出版社/メーカー: 富士見書房 発売日: 1979/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る コーニー・オハ…

愚者が出てくる、城寨が見える

光文社古典新訳文庫の今月の新刊。何やらハードボイルドな雰囲気のある、フレンチ・ミステリー。 愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える (光文社古典新訳文庫) 作者: ジャン=パトリックマンシェット,Jean‐Patrick Manchette,中条省平 出版社/メーカー:…

風立ちぬ・美しい村

静かに流れる美しい文章。堀辰雄の代表的中篇、二編。 風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫) 作者: 堀辰雄 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1951/01/29 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 229回 この商品を含むブログ (60件) を見る 堀辰雄『風立ちぬ・美しい村…

黒猫/モルグ街の殺人

何となく江戸川乱歩を読んでからずっと気になっていた。たまたま光文社の新訳を古本屋で見つけたので、今回、早速読んでみた。 黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫) 作者: ポー,小川高義 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2006/10/12 メディア: 文庫 …

愛の完成・静かなヴェロニカの誘惑

何か軽く読めるものを、と手に取り、すぐさま、とんだ思い違いをしたことに気が付いた。見た目の薄さからは想像もできないほどに、重厚な小説。 愛の完成・静かなヴェロニカの誘惑 (岩波文庫) 作者: ムージル,Robert Musil,古井由吉 出版社/メーカー: 岩波書…

ボヴァリー夫人

古典的名著と呼ばれる小説は、思い立った時に読んだ方がいい。読んだことを後悔することはほとんどないと言っていいし、それが名著である由縁が判らないことも、また、ほとんどないからだ。 ボヴァリー夫人 (新潮文庫) 作者: フローベール,生島遼一 出版社/…

ディフェンス

大学三年生の時、毎日のようにチェスを指していた。相手をしてくれていた友人がフランスに発ってからは、この素晴らしい習慣は失われてしまっていたが、チェスに対する興味は未だに尽きていない。 ディフェンス 作者: ウラジーミル・ナボコフ,若島正 出版社/…

ふたりのロッテ

好きな作家の本を読めるというのは、なんて幸せなことなんだろう。しかも、それがまだ未読のものであるなら尚更だ。とはいえ、いつもこの調子で読んでいたら、すぐに未読のものはなくなってしまう。ジレンマだ。もったいない。とうとう読んでしまった。 ふた…

マルセル・エメ傑作短編集

過去に福武文庫から『クールな男』という題で出ていたものを、タイトルを変更した上で新たに中公文庫から発売したもの。しかし、2005年に出たのに2008年末の時点で既に版元品切れ。何のために復刊したんだ。 マルセル・エメ傑作短編集 (中公文庫) 作者: マル…