Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2012-01-01から1年間の記事一覧

黒蜥蜴

またしても一ヶ月が経ってしまい、気づけば年が変わろうとしている。本を読んでいないわけではなく、むしろ記事を書くための時間すら惜しんで、かつてない勢いで読み漁っているのだ。目の前にはすでに三十冊ほど、読み終えたまま印象を書き留めていない本が…

チャイコフスキー・コンクール

ずいぶん長いあいだ更新をさぼっていたおかげで、じつにたくさんの本が読めた。あるひとりの作家やテーマなどについて熱心になっているときは、つまらない記事などを書いて自分の気持ちを整理してしまうより、時間を無駄にすることなく、情熱がつづくかぎり…

田園交響楽

先日の『クロイツェル・ソナタ』に引き続き、青柳いづみこの『六本指のゴルトベルク』に紹介されていて、どうしようもなく読みたくなった本。さすがは神西清、文字の大きさだけを変えつづける新潮文庫の海外文学のなかにあって、すこしも訳文が古びていない…

クロイツェル・ソナタ/悪魔

青柳いづみこの『六本指のゴルトベルク』で紹介されていて、どうしようもなく読みたくなった本、そのいち。19世紀のロシア文学を読むのはじつに久しぶりのことだったので、ページを開く前からとてもわくわくした。 クロイツェル・ソナタ/悪魔 (新潮文庫) 作…

六本指のゴルトベルク

最近は短歌に関連する本ばかりを紹介していたものの、じつはこれと並行して、わたしはいまかつてない情熱をもってクラシック音楽に関する本を読み漁っている。音楽論、音楽小説、作曲家の伝記など、その内訳はさまざまだが、すべてのきっかけとなったのは、…

手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)

こんなに立てつづけに紹介するべき作家ではないのに、またもや穂村弘。先日の『世界中が夕焼け』と『求愛瞳孔反射』はすこし前に読んだものだけれど、これはほんとうについ最近読み終えた。もっとゆっくり読めばよかったとも思う。穂村弘の真骨頂、歌集。 手…

求愛瞳孔反射

信頼する友人が推薦しているのを知って、途端に興味を持った一冊。歌人である穂村弘の、短歌ではない詩集。 求愛瞳孔反射 (河出文庫) 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2007/04 メディア: 文庫 購入: 17人 クリック: 259回 この商品を含…

世界中が夕焼け

あまりにおもしろい本を読むと、すぐに感想を書こうという気になれない。なんというか、きっと読み終えてしまったことを認めたくないのだ。感想を書くというのは、自分がその本に対して抱いている印象をかっちり固定化する、ということにほかならないのだけ…

とるにたらないものもの

最近また、江國香織を読むのが楽しい。また、というのは、じつはこのブログをはじめる前、彼女の作品をかなり熱心に読んでいた時期があるのだ。そのころにはまだ、どうして自分がこうまでこの作家に心惹かれるのかは説明できなかった。そのうえ、彼女の作品…

眠れる美女

友人がさまざまな文学作品の書き出しをコレクションしていて、それを見せてもらったとき、ひときわ輝いていた一冊。 眠れる美女 (新潮文庫) 作者: 川端康成 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1967/11/28 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 102回 この商品…

シルヴェストル・ボナールの罪

すでにずいぶん前のことのように思えるが、じつはほんの二ヶ月前、わたしはフランスにいた。現在住んでいる国に引っ越す前の最後のバカンス、という名目で、友人たちを訪ねまわっていたのだ。これは、そのときに携帯していた本である。読み終えたのは、パリ…

本へのとびら

すこし前、たしか去年のことなのだが、『ジブリの本棚』というDVDを購入した。とはいえ、目的はDVDよりも付録のほうにあって、このDVDには「宮崎駿が選ぶ岩波少年文庫の50冊」という、豆本サイズのたいへん魅力的な小冊子が付いていたのだ(ちなみに、DVD自…

ふふふん へへへん ぽん!

先日訃報に接したばかりの、モーリス・センダックの作品。江國香織の『絵本を抱えて部屋のすみへ』に紹介されていて、読みたくなったもの。 ふふふんへへへんぽん!?もっときっといいことある 作者: モーリスセンダック,Maurice Sendak,神宮輝夫 出版社/メー…

コルシア書店の仲間たち

大声で愛を表明せざるをえない、というわけではないけれど、一定期間を置くと不意に読みたくてたまらなくなる作家、というのがいる。須賀敦子はわたしにとって、そんな作家のひとりだ。 コルシア書店の仲間たち (文春文庫) 作者: 須賀敦子 出版社/メーカー: …

絵本を抱えて部屋のすみへ

思うところがあって、ずっと更新をしていなかった。本を読んでいなかったわけではないのだが、読み終えた一冊と向き合い、その印象を書き留めるという作業に、意味を見出せなくなっていたのだ。しかし、半年ほど書くのをやめていたおかげで、気のせいなのか…