Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

タンジブル

またしても書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」より。短歌に興味を持つようになったばかりのわたしのような読者にとって、これほど手に取りやすい選集はない。解説を含めても200ページに満たない厚さで、1ページあたりの掲載歌数は二首から多くても五首程度。…

緑の祠

先日の木下龍也『つむじ風、ここにあります』や陣崎草子『春戦争』につづき、またしても書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」の一冊。短歌を読むのが、いまとても楽しい。 緑の祠 (新鋭短歌シリーズ10) 作者: 五島諭 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2013/…

春戦争

穂村弘の『ダ・ヴィンチ』誌での連載をまとめた本、『短歌ください』に教わった歌人。ほかのたくさんの歌人の作品とともに掲載されていた彼女の歌を最初に読んだときには、作為的というか、言葉ありきで詠まれた歌が多いな、という印象を受け、正直あまり魅…

はじめての短歌

穂村弘が慶應大学でおこなった「世界と〈私〉を考える短歌ワークショップ」の講義録。とても薄いうえに字の大きな本で、出版社はなんと実用書で有名な成美堂出版。それだけでも本の性格が伝わってくるくらいだが、『短歌の友人』などで語られていた穂村弘流…

短歌ください その二

とっくに読み終えていたのにいつまでも感想を書かずにいた、穂村弘の『ダ・ヴィンチ』誌上での連載、『短歌ください』の書籍化第二弾。テーマにもとづく歌の読者投稿をほむほむが選び、コメントを付ける、という、とても幸福な本。 短歌ください そのニ (ダ…

つむじ風、ここにあります

穂村弘の連載『短歌ください』の常連投稿者でもある、木下龍也による第一歌集。新進気鋭という言葉がぴったりの、自分よりも二つも若い青年が二年も前に刊行した歌たち。 つむじ風、ここにあります (新鋭短歌シリーズ1) 作者: 木下龍也 出版社/メーカー: 書…

やがて秋茄子へと到る

まだ一冊あった。以前一読しておいて、そのまま感想を書いていなかった歌集。これの感想を書けずにいたのは、ひとに薦められた本だったからだ。わたしは性格が悪いので、ひとに薦められても、おいそれとすぐにその本を買ったりはしない。このときもそうで、…

さよならバグ・チルドレン

先日の『サラダ記念日』につづき、数年前に一読したまま感想を書いていなかった歌集紹介シリーズ、第二回にしてたぶん最終回(ほかにも何冊か読んでいるはずなのに、なぜか本が見つからないのだ)。穂村弘の短歌、いや、短歌一般を一気に身近なものにしてく…

サラダ記念日

唐突、というわけでもないけれど、俵万智。先日『短歌ください』を読んでからというもの、この定型詩との再会を心底喜んでいるわけだが、じつはいまから三年以上も前に、同じように短歌にどっぷり漬かっていた時期があったのだ。2012年5月に読み、付箋だらけ…

短歌ください

日本で会った心の友に薦めてもらった本。今回は仕事を片付けるための帰国だったため、半年以上ぶりの日本だというのに期間もたった一週間と短く、しかも毎日会議が中心の心底さびしい日程だったのだが、場所もさまざまな取引先の会社を訪問するための電車に…

アンティゴネ

読み終えたのはずいぶん前なのに、書く時間を見つけられないまま放っておいてしまったブレヒト。この本が思い出させてくれたマヤコフスキーの『戦争と世界』を先に記事にしてしまったほどだ。ソフォクレスの『アンティゴネ』に対する、ブレヒト流の改作・翻…

戦争と世界

唐突にマヤコフスキー。じつはこれについても近々書くつもりだが、ブレヒトの『アンティゴネ』を読んでいて思い出した一冊なのだ。戦争の残酷さ、というより、もっと具体的に、戦争に駆り出されること、無理やり動員されることの残酷さについて考えたとき、…

金曜日の砂糖ちゃん

調子づいてまたしても酒井駒子。『BとIとRとD』を読んだ直後に、本棚から慌てて引っ張り出してきたもの。購入したのはずいぶん昔のことなのだが、理由ははっきりと覚えている。帯の推薦文を書いていたのが、江國香織だったから。いま思うとかなり気持ち悪い…