Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

いわゆる-エッセイ

Decline of the English Murder

気づけば早くも三冊目のオーウェル評論集。いつからそんなにオーウェルが好きになったんだよ、と、自分でもちょっと笑ってしまうが、この作家の読みやすさは圧倒的で、英語で本を読んでみたい、というようなひとは、もうみんなオーウェルの評論からはじめれ…

Some Thoughts on the Common Toad

一冊の本の記事を書くのに、これほど時間をかけたのは久しぶりだ。なにもそんなにマジにならなくても、とは自分でも思ったのだが、せっかく英語の本をわざわざ紹介するのだから、気に入った箇所くらいはぜんぶ自分で訳してみなくては、と思ってしまったのだ…

Books v. Cigarettes

突然だが、どうもわたしはヘビースモーカーらしい。らしい、なんて言うのは、わたしのように煙草を吸うことに後ろめたさなどぜんぜん感じない喫煙者は、一日に何本吸ったかなど、わざわざ数えることはしないと思うのだ。かばんには常に最低でも二箱は携帯し…

自分だけの部屋

アディーチェの新刊『We Should All Be Feminists』を読んだことで、ずいぶん前に、友人から薦められたのを思い出した一冊。薦めてくれたのはアディーチェのときと同じ、マレーシア人の女の子である。彼女は「フェミニズム批評」というものに大変な関心を持…

とるにたらないものもの

最近また、江國香織を読むのが楽しい。また、というのは、じつはこのブログをはじめる前、彼女の作品をかなり熱心に読んでいた時期があるのだ。そのころにはまだ、どうして自分がこうまでこの作家に心惹かれるのかは説明できなかった。そのうえ、彼女の作品…

コルシア書店の仲間たち

大声で愛を表明せざるをえない、というわけではないけれど、一定期間を置くと不意に読みたくてたまらなくなる作家、というのがいる。須賀敦子はわたしにとって、そんな作家のひとりだ。 コルシア書店の仲間たち (文春文庫) 作者: 須賀敦子 出版社/メーカー: …

絵本を抱えて部屋のすみへ

思うところがあって、ずっと更新をしていなかった。本を読んでいなかったわけではないのだが、読み終えた一冊と向き合い、その印象を書き留めるという作業に、意味を見出せなくなっていたのだ。しかし、半年ほど書くのをやめていたおかげで、気のせいなのか…

こころの眼

バルトの『明るい部屋』をきっかけに、手を伸ばした一冊。写真家の友人が、どういうわけかわたしにプレゼントしてくれた本である。しかし、あまりにも昔のことなので、その理由がどうしても思い出せない。つまりそれだけの期間、わたしは進呈された本を棚で…

本当はちがうんだ日記

岸本佐知子の『気になる部分』と同様、読書に疲れたときに読んでいた一冊。先日『短歌の友人』を読んで以来ずっと気になっていた、穂村弘のエッセイ集。 本当はちがうんだ日記 (集英社文庫) 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2008/09 メディア:…

気になる部分

ルクレティウスや、ほかの大部な本を読みながら、読書に疲れたときに読んでいた本。先日家に遊びにきた友人が本の山から見つけ出してくれたので、読みなおしてみた。 気になる部分 (白水uブックス) 作者: 岸本佐知子 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2006/0…

父の詫び状

手に取ったきっかけは、少しばかり前にNHK・BSでやっていた「猫を愛した芸術家たち」という特別番組だった。四夜連続で放送され、日ごとに違った芸術家が取り上げられていて、そのうちの一回が向田邦子だったのだ。ちなみにほかの三人は内田百閒、夏目漱石、…

異国トーキョー漂流記

先日友人と会った折に、「外国から戻ってくると、今まで当たり前だと思っていた風景が日本独特のものだとわかる」というような話をした。それを受けて友人が薦めてくれた一冊。 異国トーキョー漂流記 (集英社文庫) 作者: 高野秀行 出版社/メーカー: 集英社 …

ミラノ 霧の風景

色々とやらなければならないことが貯まってしまって、まったく本を読めずにいた。これじゃあいかん、と思ってなにかを開いてみても、文体であるとか句読点の置き方、あるいは漢字が開かれているか、といった細かいことにばかり神経が向かってしまって、肝心…

ユルスナールの靴

ろくに連絡も寄越さない息子の様子をうかがうのと、年末のバカンス気分を少しでも堪能しようというつもりで、パリまで駆けつけてくれた母が、帰りの飛行機のなかで読もうと思ってるの、といいながら差しだしてみせた一冊。もう読んだ? と聞かれ、読んでない…

病牀六尺

先日紹介した宮脇俊三の『時刻表2万キロ』に続く、我らが読書会の第二回課題図書。他のメンバーが中々手に取らなさそうな本を持ち回りで紹介し、課題として挙げる会である。 病牀六尺 (岩波文庫) 作者: 正岡子規 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1984/07…

時刻表2万キロ

友人たちと読書会のようなものを開くことになった。月毎に課題図書を策定して、それを各自が読む。そして毎月の会合の際に感想を語り合うのだ。課題図書はメンバーの一人が当番制で推薦する。四人しかいない上に、みんな凄まじい読書家だから、安心して推薦…

図書館

2008年10月に刊行されたばかりの、アルゼンチンの愛書家による書物を巡る素敵な随想集。 図書館 愛書家の楽園 作者: アルベルト・マングェル,野中邦子 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2008/09/29 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 27回 この商品を含…

旅に出ても古書店めぐり

一年前に絶賛した『古書店めぐりは夫婦で』の続編。 旅に出ても古書店めぐり (ハヤカワ文庫NF) 作者: ローレンスゴールドストーン,ナンシーゴールドストーン,Lawrence Goldstone,Nancy Goldstone,浅倉久志 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2001/02 メディ…

不実な美女か貞淑な醜女か

職場の先輩が薦めてくれた本。ほとんど本の話をしたことのない間柄であるにも関わらず、唐突に薦められたことが逆に印象的で、すぐさま手に取った。 不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫) 作者: 米原万里 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1997/12/24 …

旅、ときどきライカ

今日、大学生活最後のテストを終えた。「単位が足りない」と唱え続けて4年、ついに僕の単位は、足りたのである。この記念すべき日を祝って、自分へのプレゼントを買った。中古のマニュアルカメラ、ニコンFEである。カメラの趣味はホルガから始まったもの…

古書店めぐりは夫婦で

すごい本に出会ってしまった。本の魅力や、愛書家の欠点がまざまざと表れている本。 古書店めぐりは夫婦で (ハヤカワ文庫NF) 作者: ローレンスゴールドストーン,ナンシーゴールドストーン,Lawrence Goldstone,Nancy Goldstone,浅倉久志 出版社/メーカー: 早…

ワセダ三畳青春記

一人旅をしている最中に立ち寄った、岩手は盛岡の「さわや」という本屋で、強く薦められていた本です。 「さわや」はポップの多い、今時珍しく趣味の匂いのする素敵な本屋で、このお店のブックカバーがまた何とも言えず素敵でした。こんな言葉が書いてありま…