Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

古書店めぐりは夫婦で

すごい本に出会ってしまった。本の魅力や、愛書家の欠点がまざまざと表れている本。

古書店めぐりは夫婦で (ハヤカワ文庫NF)

古書店めぐりは夫婦で (ハヤカワ文庫NF)

 

ローレンス・ゴールドストーン、ナンシー・ゴールドストーン(浅倉久志訳)『古書店めぐりは夫婦で』ハヤカワNF文庫、1999年。


これは古本屋で美しい装幀と、挿絵や地図の付いた『戦争と平和』を買ってしまった夫婦が、みるみる古書の世界に引き込まれていくノンフィクションである。

愛読家が読書にかける金額は半端じゃない。
僕自身、一年あたり平均八十万円ほどを費やしている。換算するとぞっとするが、それでも僕は可能な限り古本を買っているのだ。
古書店街に行くこともしばしば。というよりも、僕が高田馬場に居を構えているのはそもそも早稲田の古本屋街に行くためだ。神保町にも頻繁に足を運んでいる。そういった街の由緒ある古書店では、しばしば「初版本」や「稀覯本」が見受けられる。そういった高価な古本に取り憑かれた著者夫婦が、次々と本を集めていくのは痛快以外の何者でもない。著者に共感すると共に、初版本や稀覯本の価値を教わった。しかし残念ながら、現段階で僕が初版本を集める予定も余裕もないことは確実だ。

だが、この本を読んでいて読みたくなった本が格段に増えたことは書かなければならない。日本ではあまり読まれていないが、アメリカや他国では読まれている作家は山といる。ヘンリー・ジェイムズサマセット・モームは現地ではディケンズと同じくらい有名なのだ。ディケンズすら、特定の作品を除けば日本ではあまり読まれていないのではあるまいか。需要が無いとは思いたくないものである。

尚、この本の原題は「Used and Rare:Travels in The Book World」であり、その続編となる「Slightly Chipped:Footnotes in Booklore」も既に刊行されている。翻訳が出ることを望むが、残念ながら需要はほとんど無いだろう。翻訳を待つよりは原書を購入した方が早そうだ。ヘンリー・ジェイムズサマセット・モームに然り。 

古書店めぐりは夫婦で (ハヤカワ文庫NF)

古書店めぐりは夫婦で (ハヤカワ文庫NF)

 
Used and Rare: Travels in the Book World

Used and Rare: Travels in the Book World