Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2006-01-01から1年間の記事一覧

夏への扉

面白い。想像力の最大の到達点がSFなのだと思う。 夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345)) 作者: ロバート・A・ハインライン,福島正実 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1979/05 メディア: 文庫 購入: 46人 クリック: 601回 この商品を含むブログ (483件) を…

箱男

カフカ賞が村上春樹に授けられたのを聞いて、思い出したのは安部公房の存在だった。 箱男 (新潮文庫) 作者: 安部公房 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2005/05 メディア: 文庫 購入: 12人 クリック: 69回 この商品を含むブログ (216件) を見る 安部公房『箱…

シンプルな情熱

アゴタ・クリストフの翻訳をしている堀茂樹が手掛けた、フランスの女流作家の作品。 シンプルな情熱 (ハヤカワepi文庫) 作者: アニーエルノー,Annie Ernaux,堀茂樹 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2002/07 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 7回 この…

飛ぶ教室

また天才に出会ってしまった。最初に彼を児童文学作家と呼んだのは一体誰だろう?しかしそんなことはどうだっていい。一つだけ言えるのは、そいつは『飛ぶ教室』を読まなかったということだ。 飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫) 作者: ケストナー,丘沢静也 出版…

雪のひとひら

新潮文庫から出ている、ポール・ギャリコの小編。 雪のひとひら (新潮文庫) 作者: ポールギャリコ,矢川澄子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2008/11/27 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (16件) を見る ポール・ギャリコ(矢…

マーチ博士の四人の息子

すごいアイディアだ。 本当に、ただただすごい。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したというのも、何となく理解できる。 マーチ博士の四人の息子 (ハヤカワ文庫HM) 作者: ブリジットオベール,Brigitte Aubert,堀茂樹,藤本優子 出版社/メーカー: 早川…

昨日

『悪童日記』の著者が描く、亡命者の叫び。 僕らは戦争を知らない。それに付随する亡命も知らない。祖国を奪われる、とは一体どんな感情なのだろうか。ミゲル・リティンがガブリエル・ガルシア・マルケスを通して祖国への想いを語った『戒厳令下チリ潜入記』…

パレード

友人に薦められて手にした本です。これまで吉田修一の著作を読んだことはなかったのですが、素晴らしく文章が上手いと思いました。 パレード (幻冬舎文庫) 作者: 吉田修一 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2004/04 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 112…

第三の嘘

『悪童日記』、『ふたりの証拠』に続く三作目。ストーリーは再び、僕らの想像を易々と越える。 第三の嘘 (ハヤカワepi文庫) 作者: アゴタ・クリストフ,堀茂樹 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2006/06 メディア: 文庫 購入: 40人 クリック: 332回 この商…

ふたりの証拠

『悪童日記』に続く、第二作目。 ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫) 作者: アゴタクリストフ,Agota Kristof,堀茂樹 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2001/11 メディア: 文庫 購入: 38人 クリック: 327回 この商品を含むブログ (115件) を見る アゴタ・クリ…

悪童日記

本当に女性なのでしょうか。あまりにもリアルに戦争を描いた新しい古典。 悪童日記 (ハヤカワepi文庫) 作者: アゴタクリストフ,Agota Kristof,堀茂樹 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2001/05 メディア: 文庫 購入: 100人 クリック: 3,630回 この商品を含…

幻獣ムベンベを追え

未確認巨大生物――この荒唐無稽な名詞の本意について、誰しもが一度は考えたことがあるだろう。しかし、考えることと実際に探すということの違いがどれ程のものか、その圧倒的な違いを教えてくれる本がある。 幻獣ムベンベを追え (集英社文庫) 作者: 高野秀行…

国民国家とナショナリズム

山川出版社から出ている「世界史リブレットシリーズ」。僕にとってこれは諸問題の前提知識を与えてくれる入門書であり、多くの関連書籍を教えてくれるガイドラインでもある。これから紹介する本はそんなリブレットの中で、上にあげたある種リブレット的な要…

高い窓

有無を言わせぬ格好良さ。ひょっとしたら僕らはレイモンド・チャンドラーのファンなのではなく、フィリップ・マーロウのファンなのかもしれない。 高い窓 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: レイモンドチャンドラー,清水俊二 出版社/メーカー: 早川書房 発売日…

長いお別れ

貴方は、読んでいて犯人が誰だっていいと思えるミステリー小説が、この世に存在していることを簡単に信じられるだろうか。それは勿論、俄かには信じられないことだ。しかし強制的に信じさせられることがある、ということに比べたら、そんなことは大して重要…

アフターダーク

今月の15日に、ようやく文庫化された村上春樹の中編小説。あと一週間文庫化が遅ければ、おそらくハードカバーを買ってしまったため、この遅すぎる文庫化を責めることはできない。 アフターダーク (講談社文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 講談社 発売…

ワセダ三畳青春記

一人旅をしている最中に立ち寄った、岩手は盛岡の「さわや」という本屋で、強く薦められていた本です。 「さわや」はポップの多い、今時珍しく趣味の匂いのする素敵な本屋で、このお店のブックカバーがまた何とも言えず素敵でした。こんな言葉が書いてありま…

ダンス・ダンス・ダンス

読み終わってから深く考えさせられる小説がある。読んでいても何も感慨の湧かない小説もある。しかし、これはそのどちらでもない。 ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2004/10/15 メディア: 文庫 購…

オイディプス王・アンティゴネ

ギリシア三大詩人、ソフォクレスの「オイディプス王」を収録した戯曲です。 『海辺のカフカ』を読んでから気になっていたため、初めて手に取ることとなりました。 オイディプス王・アンティゴネ (新潮文庫) 作者: ソポクレス,福田恒存 出版社/メーカー: 新潮…

FINE DAYS

母に薦められて読んだ本を紹介します。 昨今売れ出した作家の本、というのには裏切られる回数が多かったので忌避していたのですが、さすが我が母親、この人は本物です。避けていたことを後悔させられました。 FINE DAYS (祥伝社文庫) 作者: 本多孝好 出版社/…

青の炎

高校生の頃に読んだ、ミステリー小説。 何故今更、思い出したのか。 理由はさっぱり浮かばないものの、そういうフィーリングを大切にしたいと思ったので紹介します。 青の炎 (角川文庫) 作者: 貴志祐介 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 2002/10/25 メディ…

海辺のカフカ

世界の万物はメタファーだ。 完結している小説。 人間は何かに自分を付着させて生きていく。 海辺のカフカ (上) (新潮文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2005/02/28 メディア: 文庫 購入: 21人 クリック: 1,037回 この商品を含むブログ …

戒厳令下チリ潜入記

久々です。 更新していない間にめちゃめちゃな量の本を読んだ気がするので、機を見て紹介していきます。 戒厳令下チリ潜入記―ある映画監督の冒険 (岩波新書 黄版 359) 作者: G.ガルシア・マルケス,後藤政子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1986/12/19 メ…

火星年代記

天才。ここまで想像力が及ぶものか、と感動しました。レイ・ブラッドベリは天才です。 火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114) 作者: レイ・ブラッドベリ,小笠原豊樹 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1976/03/14 メディア: 文庫 購入: 13人 クリック: 329回 こ…

テレビの罠――コイズミ現象を読みとく

最近「良書」ばっかり読んでいるな、と思っていた矢先に不意打ちを受けました。 久々にこんなにひどい本を読んだ。びっくりしました。 大学の友人に薦められて買ったものの、ものすごい金の無駄をした気がします。 友人が冗談で薦めていた可能性に期待するば…

寝ながら学べる構造主義

ちょっと前に挙げた内田樹の構造主義入門書。 「構造主義」というイデオロギーを理解している人がどれだけいるでしょうか? 僕は口が裂けても「理解している」なんて言えないので、人に聞かれたらこの本を薦めています。 寝ながら学べる構造主義 (文春新書) …

増殖する「ナショナリズム」の正体――なぜハマるのか

今回は本では無く、講演報告を紹介します。 宮台真司の友人ということで忌避していた北田暁大の講演です。まず書いておかなければならないのは、良いこと言ってる。避けていたのは間違いだったと、書かなければならないです。 批判すべき箇所も多々みられる…

愛と暴力の現代思想

『無産大衆神髄』の時に少し触れた、矢部史郎・山の手緑の新刊。ようやく読み終わりました。 愛と暴力の現代思想 作者: 矢部史郎,山の手緑 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2006/04 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 54回 この商品を含むブログ (31件)…

ナショナリズムの克服

驚いた。たまたま姜尚中の講演に行くから一冊適当な本でも読もう、と思って手に取った新書にこれほど楽しませてもらえるとは、全く予想していなかった。 戦後後期におけるナショナリズムに興味を持っていたから手に取ったにすぎないような読者をここまで惹き…

パリ歴史探偵術

2005年だかに講談社現代新書の装丁が変わったじゃないですか。 絶対昔のほうが良かったですよね。 愚痴から始めてごめんなさい。 今回は僕をパリへと旅立たせた本を紹介します。 パリ歴史探偵術 (講談社現代新書) 作者: 宮下志朗 出版社/メーカー: 講談社 発…