Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

青の炎

高校生の頃に読んだ、ミステリー小説。
何故今更、思い出したのか。
理由はさっぱり浮かばないものの、そういうフィーリングを大切にしたいと思ったので紹介します。

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)

 

貴志祐介『青の炎』角川文庫、2002年。


高校に通う17歳の男の子が、自分の家庭のささやかな幸福を守るために人を殺す話です。
彼が計画する完全犯罪としての殺人は、化学の教科書に載っている化学反応や、国語の教科書に載っている夏目漱石の『こころ』の心性などに依拠するもので、当時ぴったり17歳だった僕は学校で教わった記憶の新しい、そういった理論の援用方法を見て驚愕したものでした。

最初から最後まで、一貫して純粋。

高校生の持つ当たり前の日常の中に、非現実的な「殺人」というテーマがすんなりと当てはめられている。人を殺すことで失われるものの恐ろしさに気付かせてくれる小説です。

貴志祐介の他の作品は読んだことがないけれど、これは無条件に薦めます。
17歳である全ての人へ。かつて17歳だった全ての人へ。

映画しか観ていない人は、小説を読んで印象を改めてください。
小説しか読んでいない人は、映画を観ようとは思わないでください。

そんな小説です。 

青の炎 (角川文庫)

青の炎 (角川文庫)