Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

FINE DAYS

母に薦められて読んだ本を紹介します。
昨今売れ出した作家の本、というのには裏切られる回数が多かったので忌避していたのですが、さすが我が母親、この人は本物です。避けていたことを後悔させられました。

FINE DAYS (祥伝社文庫)

FINE DAYS (祥伝社文庫)

 

本多孝好『FINE DAYS』祥伝社文庫、2006年。


他のところで薦めたこともありますが、かなり完成度の高い短編集です。
短編集といっても、一つ一つの作品が独立した重みを持っているため、収録された四つの短篇全てを読み終わった頃には、四冊の本を読み終えたような気分になります。

表題作の「FINE DAYS」と「眠りのための暖かな場所」は若干の怖さもあります。
気に入ったのは「イエスタデイズ」と「シェード」です。
「イエスタデイズ」は死に捕えられようとしている父親の、若き日の恋人を探す話で、超現実的な(シュールレアリスティックな)世界と、あまりにも現実的な現実の二つのギャップがとても新鮮でした。
「シェード」はアンティークのお店に置かれたランプシェードをめぐるお話です。パウロ・コエーリョの作品のような世界観がとても気に入りました。パウロ・コエーリョが好きな人は絶対に気に入ります。断言できます。

全体的に幻想的な短編集です。超越的な何かがあって、それにまつわるストーリーが展開される。
文体について言えば、本多孝好村上春樹アルベール・カミュが好きなんだろうな、と感じました。翻訳小説を読んでいるような、物事を俯瞰したある種「法学部っぽい」文章です。

読み終わってすぐに前のデビュー作である短編集『MISSING』も読みましたが、こちらの方が僕の好みには合っています。 

FINE DAYS (祥伝社文庫)

FINE DAYS (祥伝社文庫)