Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

悪童日記

本当に女性なのでしょうか。あまりにもリアルに戦争を描いた新しい古典。

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

 

アゴタ・クリストフ堀茂樹訳)『悪童日記』ハヤカワepi文庫、2001年。


この小説の興味深い点は、まず主体が常に「僕ら」であることだろう。主人公は双子の兄弟で、彼らは全てを共有しながら訳者によってハンガリーを指すであろうと推測される戦争中の世界を生きる。

原文はフランス語で書かれ、タイトルは「Le Grand Cahier」、つまり「大きなノート」だ。これは作中でこの双子が作り上げる「大きなノート」と同一のもので間違いない。
何故「大きなノート」が現在のあまりにも有名な「悪童日記」というタイトルになったのか、個人的にはかなり気になるところである。訳者の解説によればこれは「作品の内容をより具体的に、そしてやや反語的にイメージさせることを狙った訳題」(p.282)だそうだ。それが成功しているかどうかはともかく、作品の内容は素晴らしいものだ。訳も良い。

二時間もあれば読めてしまう本なので、是非多くの人に読んでもらいたい本です。絶対に損はしません。 

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)