昨日
『悪童日記』の著者が描く、亡命者の叫び。
僕らは戦争を知らない。それに付随する亡命も知らない。祖国を奪われる、とは一体どんな感情なのだろうか。ミゲル・リティンがガブリエル・ガルシア・マルケスを通して祖国への想いを語った『戒厳令下チリ潜入記』とは、全く異なる次元で祖国への想い――諦めと呼ぶべきかもしれない――が叫ばれている。
- 作者: アゴタクリストフ,Agota Kristof,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/05
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アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『昨日』ハヤカワepi文庫、2006年。
『悪童日記』とは異なる物語だ。しかし、この作品の主人公――隠喩としてのアゴタ・クリストフが、あの三部作を書き上げたのだろう。絶望は依然としてそこにあった。
こんな台詞がある。
「町へ行け。町には、まだ光がある。おまえの顔を蒼白くする光、死に似ている光。町へ行け。町では、人びとは幸福だ。愛を知らないがゆえに――。彼らはあまりにも満たされているので、互いの存在を必要と感じず、神も必要としていない。夜、彼らは自分の家の扉に二重の鍵をかけ、辛抱強く人生が過ぎ去るのを待つ」(154ページ)
本当に、その通りだと思う。
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