Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

ブラウン神父の無心

 このところ英語の本ばかり読んでいる気がするが、じつはそれらと並行して、日本語で書かれた一冊の本をかなり長いあいだ鞄に潜ませていた。仕事を早く切り上げられた日に、喫茶店へ直行して読むための本であり、短篇一篇あたりがだいたい、ちびちびと飲むコーヒー一杯分の時間で読み終えることができる(読み終えるころにはコーヒーは冷めているが)。それがあんまり楽しかったので、翻訳者違いの再読だというのに、初めて読むような興奮とともに最後のほうは心底惜しみつつ読み終えた。世界が求めていたコラボレーション、南條竹則訳の「ブラウン神父」。

ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

 

G・K・チェスタトン南條竹則訳)『ブラウン神父の無心』ちくま文庫、2012年。

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