シラクのフランス
記念すべき第三弾はジャーナリスト軍司泰史。
もうみんな気づいているとは思うけど、とりあえず何か新しく読むまでは、前に読んだオススメ本を書いていきます。というわけで評価の星の数が多いのは必然によるものです。
軍司泰史『シラクのフランス』岩波新書(新赤版)、2003年9月。
現代のシラク体制におけるフランスの現状を政治と絡めながら追った本。
軍司泰史は95年から99年までパリに滞在していた共同通信社の特派員で、ジャーナリストだけあって非常に読みやすい文章を書いています。
以下目次。
第1章 1995年、反乱の冬
第2章 地下450メートルの孤独
第3章 さまよえるエリートたち
第4章 1997年、制裁の夏
第5章 国家の右手、国家の左手
第6章 ルペンのフランス
第7章 凡庸な男の特別な犯罪
第8章 アメリカ・コンプレックス
終章 変わる国、変わる人
個人的には第5章「国家の右手、国家の左手」が秀逸だと思います。
元首相のリオネル・ジョスパンの思想の基盤である、社会学者ピエール・ブルデューについての言及が多く見られる章です。それまでブルデューの思想に触れる機会がなかった僕には少なからず衝撃的でした。
「今日における新自由主義的な政治の帰結の一つは、家族や自主的団体、地方自治体、組合、そして国家という、人々の連帯の基礎であるあらゆる社会的なつながりを時代遅れであると称して破壊することだ」(本書、117ページ)
フランス社会の特異性を象徴する「連帯」という概念を破壊しようとする、ネオリベラリズム(新自由主義)への警鐘がそこには表れています。
「連帯」は、日本では中曽根内閣以降の徹底した自民党による新自由主義的政策の中で、とうに破壊されてしまった概念であるように思えます。その「連帯」をフランス人のアイデンティティとして固持しようとするジョスパンの闘いが克明に描かれています。
日本にもこんな政治家がいたら素敵ですね。