Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2010-01-01から1年間の記事一覧

不穏の書、断章

ポルトガル文学を求めて辿り着いた、フェルナンド・ペソアの世界。初ペソアながらも、この詩人に今まで出会えなかったことを後悔するほどの内容だった。ペソアの書くものには、ただならぬ吸引力がある。電車の中と就寝前の数時間が素晴らしく豊かなものにな…

移動祝祭日

ヘミングウェイの描いた、まだ二十代だった頃に体験したパリの想い出の数々。最晩年に書かれた遺作にして最高傑作。新訳版。 移動祝祭日 (新潮文庫) 作者: アーネストヘミングウェイ,高見浩 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/01/28 メディア: 文庫 購入…

見知らぬ島への扉

『白の闇』が予想外に面白かったため、手にとってみた二冊目のサラマーゴ。インターネットで注文したため、届いた時にはあまりの薄さに仰天した。 見知らぬ島への扉 作者: ジョゼサラマーゴ,Jos´e Saramago,黒木三世 出版社/メーカー: アーティストハウス 発…

閉じた本

先日読んだサラマーゴの『白の闇』から連想して手に取った、盲目の作家を主人公に擁した小説。ペレックの『煙滅』を英訳した張本人でもあるギルバート・アデアの仕事である。 閉じた本 (創元推理文庫) 作者: ギルバート・アデア,青木純子 出版社/メーカー: …

白の闇

仕事の都合というかプライベートの都合というか、プライベートをも浸食する仕事の都合というか、まったく本を読む時間を持てなかった。半月も本を読めずにいると発狂しそうになる。だから今日仕事が一段落して、喫茶店に駆け込んだ時にこの本を開けた喜びは…

マクベス

『オセロー』『リア王』『ハムレット』と並んで、四大悲劇の一つに数えられる、スコットランドを舞台としたシェイクスピアの悲劇。半年以上読んでいなかった、久しぶりのシェイクスピアである。 シェイクスピア全集 (〔29〕) (白水Uブックス (29)) 作者: ウ…

転落

最近諸事情から読書に時間を割くことがほとんどできないでいる。そんな時に手に取った、慌ただしい読書を徹底的に拒む本。おそらく最も手に取ったはいけなかった類いの書物。 転落・追放と王国 (新潮文庫) 作者: カミュ,大久保敏彦,窪田啓作 出版社/メーカー…

比類なきジーヴス

ユーモア文学の古典的傑作として名高い、P・G・ウッドハウスのジーヴスもの。国書刊行会による「ウッドハウス・コレクション」の第一回配本である。 比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション) 作者: P.G.ウッドハウス,Pelham Grenville Wodehouse,森…

煙滅

翻訳不可能と喧伝されたペレックの傑作、"La Disparition"の邦訳がとうとう刊行。その名も『煙滅』。 煙滅 (フィクションの楽しみ) 作者: ジョルジュペレック,Georges Perec,塩塚秀一郎 出版社/メーカー: 水声社 発売日: 2010/01 メディア: 単行本 購入: 1人…

ハーン=ハーン伯爵夫人のまなざし

松籟社が刊行している大変魅力的なシリーズ「東欧の想像力」第三回配本。第一弾はダニロ・キシュ(セルビア)の『砂時計』で、ボフミル・フラバル(チェコ)の『あまりにも騒がしい孤独』が続き、本書、ミロラド・パヴィチ(セルビア)の『帝都最後の恋』、…

天来の美酒/消えちゃった

光文社古典新訳文庫、先月の新刊。帯に「南條竹則・幻想シリーズ第4弾!」と書かれている。そんなことを言われたらもう読むしかないじゃないか。光文社の算段にまんまと引っかかり続けている。 天来の美酒/消えちゃった (光文社古典新訳文庫) 作者: アルフレ…

ドン・キホーテ

長かった。年末の宴会続きや体調不良も重なって、通読するだけで一ヶ月もかかってしまった。しかも読み終えた今でも、この本が自分の中で完結した気が全くしない。むしろようやく、この本が秘める広大な世界のスタート地点に立つことが出来た、という心境で…