Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

日本という国

結局、生活日記→映画日記と経て、読書日記になりました。
また変わるかもしれません。
でもとりあえず記念すべき第一弾は小熊英二

日本という国 (よりみちパン!セ)

日本という国 (よりみちパン!セ)

 

小熊英二『日本という国』理論社YA新書、2006年3月。


理論社が最近始めた「中学生以上すべての人」を対象としたシリーズ、「よりみちパン!セ」の一冊として発売された本著。
この「よりみちパン!セ」シリーズの著者たちの顔ぶれは非常に面白く、作家の重松清や漢字学者の白川静をはじめに、みうらじゅん養老孟司しりあがり寿宮沢章夫までもがそれぞれ得意とするテーマを論じている。
僕は前からこのシリーズに興味を持っていた。というのは岩波ジュニア新書などを見る限り、前提知識が何も無い人々を対象として書かれた本は面白いものが多いからだ。
とは言うものの、購入に踏み切る決定的な理由がないまま、時間が経っていた。

そこで、小熊英二の本著が出た。

前もって調べていれば良かったものの、僕が神保町の三省堂でこの本と出逢ったのは全くの偶然だった。エスカレーターを上がった一番目立つところに無造作に置かれていたのである。
本屋で働いてるくせにこの本の存在を知らなかった僕は驚愕しながら手にとって、そのままレジに向かった、という次第だ。

家に置かれたまま他の本を読んでいる間に、購入から少し間隔が開いてしまったものの、ようやく再び手にとった。

結論として、すごく読みやすい。且つ内容に富んでいる。
タイトルとなっている『日本という国』からもわかる通り、これは近代における「日本」の形成を追った本で、明治期と戦後で大まかに二つのパートに分かれている。

注目すべきは戦後の方だ。

戦後、日本がいかにアメリカの言いなりになって内政及び外交を行ってきたかが克明に描かれている。前半部はともかく、中学生にとっては後半部はいささか理解が困難になるかもしれない。教科書では書けない因果関係を赤裸々にしているからだ。
これを読めば戦後の日本史を学ぶ上での助けになるかもしれないが、同時に妨げとなるかもしれない。それほど、この本は戦後の日米関係を詳細に追っている。

各トピックごとに箇条書きすると論題が難しく見える可能性があるから、あえてここでは書かない。でも、この本は難しい論題(例えば「占領改革と憲法」)を平易な文章でわかりやすく書いてある、という点で非常に優れてる。

最初に「すごく読みやすい」と書いたものの、これを読むべきなのは中学生でも受験を控えた高校生でもなく、高校卒業以上の人たちだろう。つまり僕のような大学生だ。

読んでいて何度も思ったことだけど、小熊英二は思想の全てを語っていない。
若年層を対象にしてるんだから当たり前なんだけど、ものすごく気になってしまった。
この本を読むと、小熊英二の『〈民主〉と〈愛国〉』(新陽社、2002年)を何が何でも読みたくなるので、要注意。ちなみに税込みで6615円もします。

日本という国 (よりみちパン!セ)

日本という国 (よりみちパン!セ)