Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

蠅の王

人間の内面の暗黒を追及した、ノーベル文学賞受賞作家の作品。 

蠅の王 (新潮文庫)

蠅の王 (新潮文庫)

 

ウィリアム・ゴールディング(平井正穂訳)『蠅の王』新潮文庫、1975年。


新世紀の少年漂流物語。無人島に不時着した少年たちが、助けを待つ間に繰り広げる闘争の物語。

読むのに随分と時間がかかってしまった。忙しかったのもあるが、テンポが悪く読み進めるのが苦痛だったというのが本音だ。
訳が良くないと断言したい。他にいくらでも訳しようがありそうな箇所も多く、前半のテンポの悪さは珍しいとまで言えよう。

著者が形式的に少年文学を踏襲しようとしているのも、テンポを悪くしているのかもしれない。ラストにも不満が残った。ノーベル文学賞にケチをつける気は毛頭ないが、個人的にはほとんど好きになれない作品だった。トム・ソーヤーが嫌いだからかもしれない。

技巧的で心理描写は繊細。新たに訳されることがあれば、また手に取るかもしれない。

蠅の王 (新潮文庫)

蠅の王 (新潮文庫)