Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2011-01-01から1年間の記事一覧

きことわ

確実な選書眼を持つ友人が激賞しているのを知って、興味を持った本。「芥川賞」という単語を耳にするたびに、生田耕作の書いた「芥川賞などを追いかけるくらいなら、古典でも読み返しているほうが余程良い」という言葉を思い起こすほど、賞自体にはまるで興…

雑記:クノーがつくる理想の叢書

レーモン・クノーが作成した「理想の書斎のために」という書物目録を、日本の出版状況に照らし合わせて紹介してみようという試み。 元ネタはWikipediaフランス語版の「Pour une Bibliothèque Idéale」、1956年にクノーによってまとめられた同名の書籍である…

エムズワース卿の受難録

なにかやらなければならないことがあると、それ以外のことに対して尋常じゃない集中力を発揮してしまう。そもそも、なにかやらなければならないことがあるというのに、この作家の本が手の届く範囲にあるというのがいけないのだ。その作家とは、P・G・ウッド…

ミラノ 霧の風景

色々とやらなければならないことが貯まってしまって、まったく本を読めずにいた。これじゃあいかん、と思ってなにかを開いてみても、文体であるとか句読点の置き方、あるいは漢字が開かれているか、といった細かいことにばかり神経が向かってしまって、肝心…

もう一人のメンデルスゾーン

友人がフランスに遊びに来るというので、土産として持って来て欲しいとお願いした一冊。探すのが大変な本をお願いしてしまったかもしれない、と思いもしたのだが、彼も書店員なので難なく見つけてくれたようだ。 もう一人のメンデルスゾーン―ファニー・メン…

ユークリッジの商売道

年末にパリのブックオフで購入した、大量の日本語書籍のなかの一冊。国書刊行会の「ウッドハウス・コレクション」第一弾『比類なきジーヴス』を読んでから他のも読みたいと思っていたので、選集の第四巻であることなどお構いなしに購入した。 ユークリッジの…

雑記:笑顔が湧き出るユーモア文学

日本で書店員をやっていたころに大変よくして頂いた空犬さんが、ご自身のブログ空犬通信のなかで「こんなときだからこそ、本を」という記事を書いていらっしゃいました。記事によると、発起人は上落合にある伊野尾書店の店長さんだとか。大切な友人たちのた…

シネロマン

年末にまとめて購入した三冊のロジェ・グルニエのうち、最後の一冊。ほかの二冊の短篇集(『フラゴナールの婚約者』と『夜の寓話』)とは異なり、これは手に入った唯一の長編小説である。 シネロマン 作者: ロジェグルニエ,Roger Grenier,塩瀬宏 出版社/メー…

夜の寓話

年末にまとめ買いをしたロジェ・グルニエ第二弾。先日の『フラゴナールの婚約者』と同じく短篇集だが、こちらはちょうど私が望む短篇集の厚さで、小気味よく読み進めることができた。 夜の寓話 作者: ロジェグルニエ,Roger Grenier,須藤哲生 出版社/メーカー…

フラゴナールの婚約者

年末にパリのブックオフで大人げないほどの大人買いをした日本語書籍のうちの一冊。ロジェ・グルニエのフランス語書籍は残念ながらほとんどが絶版になってしまっていて、日本語のほうが遙かに見つけやすくなってしまっている。そのブックオフにはどういうわ…

麗しのオルタンス

日本に帰国した暁にはすぐにも読まねば、と思っている本たちの膨大なリストを片手に、パリのジュンク堂とブックオフを渉猟していた際に、うっかり見つけてしまった一冊。日本の自宅の本棚で、まだそのページを開かれることすらなく書棚に突きささったままに…

ユルスナールの靴

ろくに連絡も寄越さない息子の様子をうかがうのと、年末のバカンス気分を少しでも堪能しようというつもりで、パリまで駆けつけてくれた母が、帰りの飛行機のなかで読もうと思ってるの、といいながら差しだしてみせた一冊。もう読んだ? と聞かれ、読んでない…