Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

2011-01-01から1年間の記事一覧

愛書狂

先日の『フランスの愛書家たち』に引き続き、喜び勇んで手に取った愛書家のための書物。とはいえこちらは奢覇都館の刊行物ではなく、それよりも以前の、白水社のもの。 愛書狂 (1980年) 作者: 生田耕作 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1980/12 メディア: ?…

神様 2011

どこから書名を知ったのかも定かではないが、珍しく母が欲しがって、先日ジュンク堂池袋本店に寄った際に、土産として買ってきてあげた本。一読した母に薦められ、手に取ってみた。 神様 2011 作者: 川上弘美 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2011/09/21 メ…

和子の部屋

友人に魅力を熱弁されたのがきっかけで手に取った、阿部和重の対談集。7月末に刊行されたばかりの、『小説トリッパー』にて連載されていたコラムをまとめたもの。 和子の部屋 小説家のための人生相談 作者: 阿部和重 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: …

フランスの愛書家たち

ずっと以前に購入して読まずにいたのを、たまたま本棚の整理をしていたら見つけたので、嬉々として手に取ってみた。そしてあっというまに読み終えた。 愛書狂 (平凡社ライブラリー) 作者: G.フローベール,Ch.ノディエ,Ch.アスリノー,A.ラング,A.デュマ,Gusta…

尾崎放哉句集

短歌に興味を持ったことで、俳句という文化にも関心が向きはじめている。そこで思い出した、尾崎放哉。じつは数年前にも読んでいたのだが、そのときには文章にしなかったので、良い機会だと思って再読してみた。 尾崎放哉句集 (岩波文庫) 作者: 池内紀 出版…

若きウェルテルの悩み

アナトール・フランスの『神々は渇く』のなかで効果的に使われているのを見てから、読みたい読みたいと思っていた一冊。古典作品は関心が向いたら手に取れ、むしろ関心が向くまで手に取るな、を信条としているわたしとしては、今がそのタイミングだった。 若…

サリンジャーは死んでしまった

以前友人が紹介しているのを読んでから、とても興味を持っていた一冊。彼女が採った以上の方法で、この本の魅力を伝えられるとも思えず、いっそのこと文章をまるまる引用してやろうか、と思ったりもするのだが、それでは完全な剽窃となってしまうので、どう…

短歌の友人

なんだか無性に短歌のことが知りたくなって、初めて手に取ってみた穂村弘。 短歌の友人 (河出文庫) 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2011/02/04 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 12回 この商品を含むブログ (24件) を見る 穂村弘『…

消えた印刷職人

ルネサンス期のヨーロッパにおいて、印刷技術の発展がユマニスム運動の普及にもたらした影響を知りたいと思って手を伸ばした、16世紀の印刷職人物語。 消えた印刷職人―活字文化の揺籃期を生きた男の生涯 作者: ジャン・ジルモンフロワ,Jean‐Gilles Monfroy,…

饗宴

まだ前期作品群もぜんぜん読めていないというのに、関心が高じすぎて手に取ってしまった、プラトンの中期作品群を代表する一作『饗宴』。とはいえ、プラトンの平易な言葉づかいは前期作品のそれと変わることはなく、予備知識を蓄える必要などまったくないこ…

夢の通い路

ひょんなことから、最初の一篇「花の下」を読む機会があり、最後まで読んでみたいと思った連作短篇集。自分にとっては二冊目の倉橋由美子。 夢の通い路 (講談社文庫) 作者: 倉橋由美子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1993/11 メディア: 文庫 クリック: 1…

エセー1

死ぬまでに絶対に読みたいと思っている本がいくつかある。いや、じつはいくつもある。そのリストには古典に数えられている作品がほとんどすべて入っていて、いっこうに短くなる気配を見せないどころか、日に日に肥大化してきているのだが、わたしの方針とし…

聖少女

すでに差し迫っている日までに、なんとしてでもこの作家の本を一冊読んでおかなければならない、という自分のうちに起こった強迫観念から手に取った一冊。必要に迫られた読書というのは、時間ばかりがかかって遅々として進まないものだが、この本に関しては…

ルネサンス書簡集

今年は自分のなかで、ユマニスムを知った記念すべき年となる気がする。エラスムスとの出会い以来、高まりつづけている関心を満たすべく手に取った、「ユマニスムの父」の書簡集。 ペトラルカ ルネサンス書簡集 (岩波文庫) 作者: 近藤恒一 出版社/メーカー: …

日常礼讃

先日ピーテル・デ・ホーホのことを書いて思い出した、以前フランス語で読んだ美術批評。わたしが「以前フランス語で読んだ」とわざわざ書いている本は、たいてい、そのため十分に理解できなかった本である。 日常礼讃―フェルメールの時代のオランダ風俗画 作…

神々は渇く

最近、何度も読み返したくなるようなぶっ飛んだ小説に出会ってないなあ、と考えていた矢先、きました、ぶっ飛んだ小説。こんなに夢中になってページを繰った読書体験は、じつに久しぶりな気がする。ぶっ飛んだ。 神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3) 作者: アナ…

死刑執行人サンソン

すでに読んだことがある本を、それと気づかずに購入してしまったことはありませんか? そしてわくわくしながらページを開いて、ただならぬ既視感(というより、既読感)に襲われることはありませんか? ありますよね、いや、ぜったいあるはず。そんな懐かし…

死刑囚最後の日

プラトンを読んでいたときに思い出した一冊。すでに部分的にはフランス語で読んでいたのだが、最後まで読みたくなったので手に取った。 死刑囚最後の日 (岩波文庫 赤 531-8) 作者: ヴィクトル・ユーゴー,豊島与志雄 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1982/…

地獄

向田邦子のエッセイ『父の詫び状』のなかで、魅力が語られていた一冊。日本でもフランスでも、今ではほとんど忘れられてしまった作家、バルビュスが1908年に発表した作品。 地獄 (岩波文庫 赤 561-1) 作者: アンリ・バルビュス,田辺貞之助 出版社/メーカー: …

ゴルギアス

プラトンの対話篇のなかでも、かなり長い作品。中公クラシックス版『ソクラテスの弁明ほか』に収められたものも、これで最後。 ソクラテスの弁明ほか (中公クラシックス (W14)) 作者: プラトン,田中美知太郎,藤沢令夫 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日:…

クリトン

『ソクラテスの弁明』と併録されることのきわめて多い、裁判後のソクラテスとその友クリトンとの対話を描いた掌篇。どれくらい掌篇かと言うと、わずか40ページほどの作品である。 ソクラテスの弁明ほか (中公クラシックス (W14)) 作者: プラトン,田中美知太…

ソクラテスの弁明

先日『プロタゴラス』を読んで、前にプラトンを読んだのがもうずいぶん昔のことのように思われたので、本棚から学生時代に読んだ一冊を取りだしてきて、再読した。 ソクラテスの弁明ほか (中公クラシックス (W14)) 作者: プラトン,田中美知太郎,藤沢令夫 出…

プロタゴラス

じつに久しぶりな光文社古典新訳文庫。パラパラとページをめくっていたつもりが、あまりの読みやすさに一気に読み終えてしまった。 プロタゴラス―あるソフィストとの対話 (光文社古典新訳文庫) 作者: プラトン,中澤務 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2010/…

遊女の対話

エラスムスの『痴愚神礼讃』に幾度となく引用され、ラブレーも愛したと伝えられるローマ時代の諷刺家、ルキアノスの作品集。 遊女の対話―他三篇 (岩波文庫 赤 111-2) 作者: ルーキアーノス,高津春繁 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1961/04/25 メディア:…

父の詫び状

手に取ったきっかけは、少しばかり前にNHK・BSでやっていた「猫を愛した芸術家たち」という特別番組だった。四夜連続で放送され、日ごとに違った芸術家が取り上げられていて、そのうちの一回が向田邦子だったのだ。ちなみにほかの三人は内田百閒、夏目漱石、…

痴愚神礼讃

フランスの大学で歴史の授業を受けていたときに、教授がぽつりと言った。「デカルト、ルソー、ヴォルテールといった、フランス革命を思想的に準備した思想家たち全員に、多大な影響を与えた人物がいた」。それが、エラスムスだった。 痴愚神礼讃 (中公クラシ…

柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方

ずっと前に友人がだれかに薦めていた本。たまたま手に取ってパラパラと開いていたら、気がついたら読み終えてしまっていた。 柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方 作者: 柴田元幸,高橋源一郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2009/03/1…

異国トーキョー漂流記

先日友人と会った折に、「外国から戻ってくると、今まで当たり前だと思っていた風景が日本独特のものだとわかる」というような話をした。それを受けて友人が薦めてくれた一冊。 異国トーキョー漂流記 (集英社文庫) 作者: 高野秀行 出版社/メーカー: 集英社 …

夕鶴・彦一ばなし

日本に帰ってきてからというもの、むさぼるように日本文学を読んでいる。といっても、それほど冊数を読んだわけではなく、すでに読んだことのある短篇作品を読み返したり、気の向くままに長篇を拾い読みしているだけなのだが。そんな気安さが、とても心地よ…

嘔吐

パリのジュンク堂で定価の二倍以上の金額を出してまで手に入れた一冊。たいして厚い本でもないのに、ようやく読み終えたのは日本に帰国してからのことだった。 嘔吐 新訳 作者: J‐P・サルトル,鈴木道彦 出版社/メーカー: 人文書院 発売日: 2010/07/20 メディ…