ガープの世界
論文を書きながら、どうしても小説に触れたくなった時に読んでいた本。
ジョン・アーヴィング(筒井正明訳)『ガープの世界』新潮文庫、1983年。
随分と長い期間読んでいた気がするが、状況が許せば丸一日かけて読み終えてしまいそうな小説。ユーモアをまじえた筆致と、興味をそそるストーリーの展開がこれを伏せることを許さない。
『ピギー・スニードを救う話』で感じたものが、より明確に語られている。原題がThe World According to Garp、即ち「ガープの意見に依る世界」であることからも示される通り、この本は個々の事象に与えられる真実の、相対的性格を暴くことを一つのテーマとしている。
「グリルパルツァーとドストエフスキーの違いはテーマにあるのじゃない。違いはそのテーマを扱う知性と洗練度にある。その違いがつまりは芸術だ、とガープは結論した」
オススメ。