Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

配架-イギリス文学

The Machine Stops

またしてもすこし時間が空いてしまった。英語で本を読むとき、読むのにかかる時間は日本語の本よりもほんの少し長いくらいなのだけれど、それを記事にしようとすると、なんだか拙い訳文を付けずにはいられなくなって、結果的に読むのの倍以上の時間がかかっ…

Decline of the English Murder

気づけば早くも三冊目のオーウェル評論集。いつからそんなにオーウェルが好きになったんだよ、と、自分でもちょっと笑ってしまうが、この作家の読みやすさは圧倒的で、英語で本を読んでみたい、というようなひとは、もうみんなオーウェルの評論からはじめれ…

Some Thoughts on the Common Toad

一冊の本の記事を書くのに、これほど時間をかけたのは久しぶりだ。なにもそんなにマジにならなくても、とは自分でも思ったのだが、せっかく英語の本をわざわざ紹介するのだから、気に入った箇所くらいはぜんぶ自分で訳してみなくては、と思ってしまったのだ…

Books v. Cigarettes

突然だが、どうもわたしはヘビースモーカーらしい。らしい、なんて言うのは、わたしのように煙草を吸うことに後ろめたさなどぜんぜん感じない喫煙者は、一日に何本吸ったかなど、わざわざ数えることはしないと思うのだ。かばんには常に最低でも二箱は携帯し…

アントニーとクレオパトラ

ちょっと暴走気味のユマニスム熱・戯曲熱が手もとに運んできた一冊。日本の実家には全集が全巻揃っていて、首を長くしてわたしの帰国を待っているというのに、あんまり読みたかったので新しく買ってしまった。本はこんなふうにして無限に増えていく。 シェイ…

無実はさいなむ

じつに久しぶりに更新をするので、もうどんなことを書いていたのか、どんなことを書くべきなのかを忘れてしまった。きっかけでもないかぎり、わたしは自分で書いたことを読み返さない。それをだれかが読んでいると思い込んでいるのだから驚きだが、じっさい…

ブラウン神父の無心

このところ英語の本ばかり読んでいる気がするが、じつはそれらと並行して、日本語で書かれた一冊の本をかなり長いあいだ鞄に潜ませていた。仕事を早く切り上げられた日に、喫茶店へ直行して読むための本であり、短篇一篇あたりがだいたい、ちびちびと飲むコ…

Pillow Talk

昨年末から気に入っているRoger McGoughの詩集。『It Never Rains』、『Slapstick』、『An Imaginary Menagerie』を経て、気づけばもう四冊目である。何度も繰り返していることではあるが、この気安さはまちがいなく価値である。 Pillow Talk: A Book of Poe…

The Reluctant Dragon

英語で書かれた児童文学を読むのがこのところ空前のブームになっているのだが、じつはこれにどっぷり浸かりはじめたのは昨年末のことで、E・B・ホワイトの『Charlotte's Web』や『Stuart Little』を読んでいたのは、ちょうどあの無闇に長い「雑記:海外文学…

An Imaginary Menagerie

年末に公開した「雑記:海外文学おすすめ作家ベスト100」が好評を博したようで、とても喜んでいる。評価し、広めてくれた方々、ありがとうございました。あけましておめでとうございます。年始早々、「おれって人気者じゃん!」なんて馬鹿げた考えに取り憑か…

Slapstick

すこし前の『It Never Rains』が大変楽しかったので、もっと読みたいと思って手にとったRoger McGoughの詩集。こちらはPenguinグループのなかでも子ども向けのPuffinから刊行されているもので、ほとんどすべての詩が挿絵付きと、大変贅沢な本である。 Slapst…

A Child's Garden of Verses

つい先日の『Little Book of Poems for Young Children』でも紹介されていた、スティーヴンスンによる子どものための詩集。先日の記事では「A Good Play」と「Bed in Summer」、それから「Young Night Thought」の3つを訳出してみたが、ほかにもたくさんいい…

It Never Rains

読んだばかりのアンソロジー『Little Book of Poems for Young Children』が教えてくれた何人もの詩人のうち、とくに興味をもったひとりRoger McGoughの、先月刊行されたばかりの最新詩集。 It Never Rains 作者: Roger McGough 出版社/メーカー: Penguin 発…

Little Book of Poems for Young Children

ヴァージニア・ウルフの『自分だけの部屋』を読んでいたら、クリスティナ・ロセッティなどの魅力的な詩が紹介されていて、そういえば英語で詩を読んだことがない、と気づき、勤め先の書店の棚から抜き出した一冊。いきなりブラウニングやキーツなどを読もう…

自分だけの部屋

アディーチェの新刊『We Should All Be Feminists』を読んだことで、ずいぶん前に、友人から薦められたのを思い出した一冊。薦めてくれたのはアディーチェのときと同じ、マレーシア人の女の子である。彼女は「フェミニズム批評」というものに大変な関心を持…

盗まれた細菌/初めての飛行機

ブルガーコフの『悪魔物語・運命の卵』を読んでいたときに、「生物の巨大化」という観点からウェルズの『The Food of the Gods(神々の糧)』が紹介されていて、そういえば久しくこの作家に触れていないな、と思い、手にとった一冊。買ったのはずいぶん前の…

アレクサンドリア

ブルース・チャトウィンの『どうして僕はこんなところに』に紀行文の楽しさを教えてもらったのをきっかけに、以前から読もう読もうと思っていた本をようやく手に取った。読もうと思っていた歳月に比べ、なんと早く読み終えてしまったことだろう。『天使が踏…

どうして僕はこんなところに

今月頭に読んだ『ウッツ男爵』があまりにおもしろかったので、もっとほかのも読んでみたいと思い手に取ったブルース・チャトウィンの作品集。2012年刊行だというのに残念ながらすでに絶版になってしまっているが、まだ在庫している書店を見つけられたので、…

ウッツ男爵

職場にて、入荷したばかりの新刊を整理している最中に目にとまった一冊。最近ちびちびと読んでいるある本のなかで、チャトウィンの名を目にすることが複数回あり、しかも翻訳者が池内紀だったので(英文学なのに!)、運命を感じて手に取った。帯にはこう書…

そして誰もいなくなった

仕事がやけに忙しかったりして、リズム良く本を読み進められずにいるようなとき、一気呵成に読める本が無性に恋しくなる。言うなれば、エンタテイメントとしての小説にどっぷり漬かりたくなるのだ。続きが気になって、思わず夜更かししてしまうような本なら…

銀河ヒッチハイク・ガイド

次に記事にしようと思っている本がいつまでたっても読み終わらないので、すこし前に読んだ本を採りあげることにした。リチャード・ドーキンスを読んでいたころに読みたくなった本の一冊で、SFの世界を舞台に英国ユーモアを爆発させたダグラス・アダムスの出…

緋色の研究

久しぶりに推理小説でも読もう、と思いたち、手に取った一冊。光文社から刊行されている『新訳シャーロック・ホームズ全集』の第三巻にして、「ホームズシリーズ」の記念すべき長篇第一作。 緋色の研究 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫) 作者: …

エムズワース卿の受難録

なにかやらなければならないことがあると、それ以外のことに対して尋常じゃない集中力を発揮してしまう。そもそも、なにかやらなければならないことがあるというのに、この作家の本が手の届く範囲にあるというのがいけないのだ。その作家とは、P・G・ウッド…

ユークリッジの商売道

年末にパリのブックオフで購入した、大量の日本語書籍のなかの一冊。国書刊行会の「ウッドハウス・コレクション」第一弾『比類なきジーヴス』を読んでから他のも読みたいと思っていたので、選集の第四巻であることなどお構いなしに購入した。 ユークリッジの…

お気に召すまま

最近長篇小説ばかり読んでいたため無性に読みたくなったシェイクスピア。タイミング良く、友人がこの本を読みたいと話していたことを思い出した。 シェイクスピア全集 (〔21〕) (白水Uブックス (21)) 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志 出版社/メ…

怪奇小説が好きならこれを、と友人が強く薦めてくれたデュ・モーリアの短編集。とにかく「モンテ・ヴェリタ」を読んでくれ、と言われ手に取った、初めてのデュ・モーリアである。代表作とされる『レベッカ』を読まずに、短編集から入ってしまった。 鳥―デュ…

閉じた本

先日読んだサラマーゴの『白の闇』から連想して手に取った、盲目の作家を主人公に擁した小説。ペレックの『煙滅』を英訳した張本人でもあるギルバート・アデアの仕事である。 閉じた本 (創元推理文庫) 作者: ギルバート・アデア,青木純子 出版社/メーカー: …

マクベス

『オセロー』『リア王』『ハムレット』と並んで、四大悲劇の一つに数えられる、スコットランドを舞台としたシェイクスピアの悲劇。半年以上読んでいなかった、久しぶりのシェイクスピアである。 シェイクスピア全集 (〔29〕) (白水Uブックス (29)) 作者: ウ…

比類なきジーヴス

ユーモア文学の古典的傑作として名高い、P・G・ウッドハウスのジーヴスもの。国書刊行会による「ウッドハウス・コレクション」の第一回配本である。 比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション) 作者: P.G.ウッドハウス,Pelham Grenville Wodehouse,森…

天来の美酒/消えちゃった

光文社古典新訳文庫、先月の新刊。帯に「南條竹則・幻想シリーズ第4弾!」と書かれている。そんなことを言われたらもう読むしかないじゃないか。光文社の算段にまんまと引っかかり続けている。 天来の美酒/消えちゃった (光文社古典新訳文庫) 作者: アルフレ…

初夜

友人の強い薦めに従い手に取った、先月末に発売されたばかりのイアン・マキューアンの最新刊。 初夜 (新潮クレスト・ブックス) 作者: イアン・マキューアン,村松潔 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/11/27 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 62回 …

タイム・マシン

SF小説の不朽の古典であり、同時に最近私が気に入っているディストピア文学ともなっている「タイム・マシン」を収録した、ウェルズ初期の短篇集。 タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫) 作者: H.G.ウエルズ,橋本槇矩 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1991/…

すばらしい新世界

ジョージ・オーウェルの『一九八四年』を読んでから、読みたくなったディストピア文学。『一九八四年』が書かれた1949年よりも17年早い、1932年に書かれた本である。 すばらしい新世界 (講談社文庫) 作者: ハックスリー,Aldous Huxley,松村達雄 出版社/メー…

一九八四年

村上春樹の『1Q84』が発売されると決まった時に、ちょうど版権が切れてしまっていたディストピア文学を代表する小説。ようやく出ました、新訳版。 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久 出版社/メーカー: 早川書房 発…

夜想曲集

今月発売されたばかりの、カズオ・イシグロ初の短篇集。 夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2009/06/10 メディア: 単行本 購入: 6人 クリック: 109回 この商品を含むブログ (79件…

やんごとなき読者

英国女王、読書にはまる。昨今話題になっている白水社の新刊。 やんごとなき読者 作者: アランベネット,市川恵里 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2009/03/11 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 78回 この商品を含むブログ (63件) を見る アラン・ベネ…

新ナポレオン奇譚

1904年に刊行された、チェスタトンの記念すべきデビュー長編。 G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚 作者: G.K.チェスタトン,高橋康也,成田久美子 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 1984/07 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブロ…

トロイラスとクレシダ

スウィンバーンによって「ヒュドラの頭を持った途方もない怪物」と呼ばれた、シェイクスピア版トロイア戦争。 シェイクスピア全集 (〔24〕) (白水Uブックス (24)) 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1983/01 メ…

ロミオとジュリエット

今や悲劇の代名詞と化した恋物語。10年程前に一度読んでいるが、その頃とは全く読後感が違って驚いた。 シェイクスピア全集 (〔10〕) (白水Uブックス (10)) 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1983/01 メディア:…

ハムレット

『オセロー』、『リア王』、『マクベス』と共に「四大悲劇」の一つとして数えられている作品、『ハムレット』。 シェイクスピア全集 (〔23〕) (白水Uブックス (23)) 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1983/01 …

スナーク狩り

ルイス・キャロルによる、『鏡の国のアリス』よりも更にマイナーな、詩のような小説のような文学作品。 スナーク狩り 作者: ルイスキャロル,河合祥一郎,ヘンリーホリデイ,Lewis Carroll,Henry Holiday,高橋康也 出版社/メーカー: 新書館 発売日: 2007/07 メ…

鏡の国のアリス

1865年生まれの『不思議の国のアリス』の妹、1872年刊『鏡の国のアリス』の柳瀬尚紀訳。 鏡の国のアリス (ちくま文庫) 作者: ルイス・キャロル,Lewis Carroll,柳瀬尚紀 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1988/01 メディア: 文庫 クリック: 2回 この商品を…

不思議の国のアリス

ルイス・キャロルによるあまりにも有名な作品の、河出文庫版。文庫にも関わらず、他社とは一味違った豪華な製本が魅力的な一冊。 不思議の国のアリス (河出文庫) 作者: 高橋康也,高橋迪,ルイスキャロル,Lewis Carroll 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日:…

箱ちがい

ロバート・ルイス・スティーヴンスンが継子であるロイド・オズボーンと共に著した、ユーモア文学のような探偵小説。 箱ちがい (ミステリーの本棚) 作者: ロバート・ルイススティーヴンスン,ロイドオズボーン,Robert Louis Stevenson,Lloyd Osbourne,千葉康樹…

ブラッカムの爆撃機

スタジオジブリ出版部、宮崎駿の編集による、飛行機とウェストールへの愛が凝縮された一冊。 ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの 作者: ロバート・アトキンソンウェストール,宮崎駿,Robert Westall,金原瑞人 出版社/メーカー: 岩波…

旅は驢馬をつれて

みすず書房から刊行されている「大人の本棚」シリーズの一冊。 旅は驢馬をつれて (大人の本棚) 作者: R.L.スティヴンスン,Robert Louis Stevenson,小沼丹 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2004/12 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ…

天使も踏むを恐れるところ

正直、これほどの小説に出会えるとまでは想像もしていなかった。ちくま文庫から出ているジェイン・オースティンの素晴らしい新訳で一気に有名になった、中野康司の初期の訳業。 天使も踏むを恐れるところ 作者: E.M.フォースター,E.M. Forster,中野康司 出版…

白魔

光文社古典新訳文庫、今月の新刊。南條竹則が訳すというだけで、一月前から楽しみにしていた。 白魔 (光文社古典新訳文庫) 作者: アーサーマッケン,Arthur Machen,南條竹則 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2009/02 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 15…

フロッシー

三冊しかない「晶文社アフロディーテ双書」の一冊。英国の詩人スウィンバーンの著作として一応議決されているものの、著者が誰であるかの確証は未だに存在しないようだ。 フロッシー 作者: A・C・スウィンバーン,江藤潔 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 200…

セールスマンの死

一昨年創刊されたハヤカワ演劇文庫の、記念すべき第一期配本。 アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫) 作者: アーサー・ミラー,倉橋健 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2006/09/20 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 47回 この商品…