Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

評価-★★★☆☆(満足)

きことわ

確実な選書眼を持つ友人が激賞しているのを知って、興味を持った本。「芥川賞」という単語を耳にするたびに、生田耕作の書いた「芥川賞などを追いかけるくらいなら、古典でも読み返しているほうが余程良い」という言葉を思い起こすほど、賞自体にはまるで興…

夜の寓話

年末にまとめ買いをしたロジェ・グルニエ第二弾。先日の『フラゴナールの婚約者』と同じく短篇集だが、こちらはちょうど私が望む短篇集の厚さで、小気味よく読み進めることができた。 夜の寓話 作者: ロジェグルニエ,Roger Grenier,須藤哲生 出版社/メーカー…

フラゴナールの婚約者

年末にパリのブックオフで大人げないほどの大人買いをした日本語書籍のうちの一冊。ロジェ・グルニエのフランス語書籍は残念ながらほとんどが絶版になってしまっていて、日本語のほうが遙かに見つけやすくなってしまっている。そのブックオフにはどういうわ…

Le C. V. de Dieu

2008年にフェミナ賞を受賞したことも記憶に新しい、ジャン=ルイ・フルニエのユーモア小説。フェミナ賞の受賞作『Où on va, papa ?』がいかにも重たそうなテーマを扱っていたので敬遠していたのだが、この『Le C. V. de Dieu』はタイトルからして既にユーモ…

César

マルセル・パニョルによるマリユス三部作、とうとう最後の一作。結局この三部作を読み終えるのに丸々一月も費やしてしまった。 Cesar 作者: Marcel Pagnol 出版社/メーカー: Distribooks Inc 発売日: 2001/01 メディア: マスマーケット この商品を含むブログ…

来たるべき蜂起

おそらく今年最もショッキングな出版物の一つに数えられるであろう、彩流社の先月の新刊。『不純なる教養』に紹介されていたことから手に取った。 来たるべき蜂起 作者: 不可視委員会,『来たるべき蜂起』翻訳委員会 出版社/メーカー: 彩流社 発売日: 2010/05…

不純なる教養

大学生の頃、僕にとって重要だったのは授業に出席することではなく、喫煙所において彼の話を聞くことだった。そんな僕の人生を徹底的に狂わせた男、白石嘉治氏による初めての単著。 不純なる教養 作者: 白石嘉治 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2010/04/23…

お気に召すまま

最近長篇小説ばかり読んでいたため無性に読みたくなったシェイクスピア。タイミング良く、友人がこの本を読みたいと話していたことを思い出した。 シェイクスピア全集 (〔21〕) (白水Uブックス (21)) 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志 出版社/メ…

原子力都市

『無産大衆神髄』と『愛と暴力の現代思想』で知られる在野の思想家、矢部史郎の最新刊。 原子力都市 作者: 矢部史郎 出版社/メーカー: 以文社 発売日: 2010/03/12 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 22回 この商品を含むブログ (12件) を見る 矢部史郎『…

怪奇小説が好きならこれを、と友人が強く薦めてくれたデュ・モーリアの短編集。とにかく「モンテ・ヴェリタ」を読んでくれ、と言われ手に取った、初めてのデュ・モーリアである。代表作とされる『レベッカ』を読まずに、短編集から入ってしまった。 鳥―デュ…

ホフマン短篇集

オットー・ランクの『分身』を読んでから読みたいと思っていたホフマン。初めてホフマンを読むにあたってどこから始めようかと考えていた時、以前友人からもらったこの短篇集を思い出した。彼はこの本を古本屋で見つけて嬉々として購入したところ、家に帰っ…

分身

アドルフォ・ビオイ・カサーレスの『モレルの発明』に書かれた、清水徹による「訳者あとがき」で紹介されていた一冊。この「あとがき」の素晴らしさには忘れがたいものがあって、紹介されている本を全て読みたいと思わせる力があるのだ。 分身 ドッペルゲン…

閉じた本

先日読んだサラマーゴの『白の闇』から連想して手に取った、盲目の作家を主人公に擁した小説。ペレックの『煙滅』を英訳した張本人でもあるギルバート・アデアの仕事である。 閉じた本 (創元推理文庫) 作者: ギルバート・アデア,青木純子 出版社/メーカー: …

天来の美酒/消えちゃった

光文社古典新訳文庫、先月の新刊。帯に「南條竹則・幻想シリーズ第4弾!」と書かれている。そんなことを言われたらもう読むしかないじゃないか。光文社の算段にまんまと引っかかり続けている。 天来の美酒/消えちゃった (光文社古典新訳文庫) 作者: アルフレ…

初夜

友人の強い薦めに従い手に取った、先月末に発売されたばかりのイアン・マキューアンの最新刊。 初夜 (新潮クレスト・ブックス) 作者: イアン・マキューアン,村松潔 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/11/27 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 62回 …

エペペ

アゴタ・クリストフの『文盲』を読んでから言語をテーマにした文学を読みたいと思い、手に取った一冊。現代社会のディスコミュニケーションを題材にしたハンガリー文学、『エペペ』。 エペペ 作者: カリンティ・フェレンツ,池田雅之 出版社/メーカー: 恒文社…

昼が夜に負うもの

今年の10月に刊行されたばかりの、ヤスミナ・カドラの翻訳三冊目。『カブールの燕たち』でアフガニスタン、『テロル』ではパレスチナを描いたアルジェリア出身作家が、とうとう描いたアルジェリアの世界。 昼が夜に負うもの (ハヤカワepiブック・プラネット)…

詩の本

友人に自慢されて欲しくなった谷川俊太郎の新刊。彼はこの本の刊行記念朗読会に参加し、谷川さんご本人に色々と質問をする機会を得たという。羨ましい。僕なら何を聞くだろうか。 詩の本 作者: 谷川俊太郎 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2009/09 メディア…

レーモン・ルーセルの謎

『アフリカの印象』と『ロクス・ソルス』の訳者、岡谷公二によるレーモン・ルーセルの評論。1989年に新たに発見された『ロクス・ソルス』の異稿に含まれた一章「アディノルファの新たな発見」を収録。 レーモン・ルーセルの謎―彼はいかにして或る種の本を書…

ダダ・シュルレアリスムの時代

職場の先輩が激賞していた、塚原史によるシュルレアリスム論。読む前に先輩が教えてくれた通り、トリスタン・ツァラの世界を知るための絶好の入門書だった。 ダダ・シュルレアリスムの時代 (ちくま学芸文庫) 作者: 塚原史 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日:…

病牀六尺

先日紹介した宮脇俊三の『時刻表2万キロ』に続く、我らが読書会の第二回課題図書。他のメンバーが中々手に取らなさそうな本を持ち回りで紹介し、課題として挙げる会である。 病牀六尺 (岩波文庫) 作者: 正岡子規 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1984/07…

1999

死の三ヶ月前に刊行された、戦後を代表する詩人田村隆一の最後の詩集。 詩集 1999 作者: 田村隆一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 1998/05 メディア: 単行本 クリック: 3回 この商品を含むブログ (8件) を見る 田村隆一『1999』集英社、1998年。

ナジャ

アンドレ・ブルトンが1928年に発表した自伝的作品『ナジャ』。現在書店で手に入る『ナジャ』は白水uブックス版とこの岩波文庫版の二種類あり、訳者はどちらも巖谷國士だが、後者のこちらは1963年にブルトン自身によって全面改訂が施された版である。 ナジャ…

シュルレアリスム宣言・溶ける魚

アンドレ・ブルトンが1924年に発表した、シュルレアリスム運動の拠り所となった記念碑的テクスト。 シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫) 作者: アンドレブルトン,Andre Breton,巖谷國士 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1992/06/16 メディア: 文庫…

タイム・マシン

SF小説の不朽の古典であり、同時に最近私が気に入っているディストピア文学ともなっている「タイム・マシン」を収録した、ウェルズ初期の短篇集。 タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫) 作者: H.G.ウエルズ,橋本槇矩 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1991/…

終の住処

磯崎憲一郎の第四作目であり、芥川賞受賞作品。書き下ろしの短篇「ペナント」を追加した上で早くも単行本化。 終の住処 作者: 磯崎憲一郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/07/24 メディア: 単行本 購入: 9人 クリック: 150回 この商品を含むブログ (96…

ノラや

猫を愛する気持ちを書き綴った、所謂「猫文学」の中でも最高の一冊。 ノラや (中公文庫) 作者: 内田百けん 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 1997/01/18 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 90回 この商品を含むブログ (127件) を見る 内田百閒『ノラ…

学問

先月末に刊行されたばかりの、山田詠美の新刊。今年は彼女にとってデビュー25周年目にあたる節目の年だ。 学問 作者: 山田詠美 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/06/30 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 73回 この商品を含むブログ (71件) を見る …

ゆう/夕

谷川俊太郎の詩と吉村和敏の写真が同時に楽しめる、『あさ/朝』の姉妹本。 ゆう/夕 作者: 谷川俊太郎,吉村和敏 出版社/メーカー: アリス館 発売日: 2004/11 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (11件) を見る 谷川俊太郎『ゆう…

あさ/朝

左からみると絵本、右から読むと詩集になっている、谷川俊太郎と写真家吉村和敏によるビジュアルブック。 あさ/朝 作者: 谷川俊太郎,吉村和敏 出版社/メーカー: アリス館 発売日: 2004/07 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 43回 この商品を含むブログ (…

眼と太陽

磯崎憲一郎の第二作目。『肝心の子供』とは随分趣の異なる、「私」によって語られるアメリカの日々。 眼と太陽 作者: 磯崎憲一郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2008/08/02 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 20回 この商品を含むブログ (20件)…

1Q84

発売から巷を騒がせている話題の新刊。元々こんなに早く読むつもりはなかったのだが、下記の事情で手に取った。 1Q84 BOOK 1 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/05/29 メディア: 単行本 購入: 45人 クリック: 1,408回 この商品を含むブロ…

本の愉しみ、書棚の悩み

先日友人と集まって文学談義をした際に、話題に上がった一冊。というか話題にしたのは自分なのだが、読んでから随分経っていた気がして再読した。 本の愉しみ、書棚の悩み 作者: アン・ファディマン,相原真理子 出版社/メーカー: 草思社 発売日: 2004/07/24 …

宇宙舟歌

『オデュッセイア』を読んでいた私にSFを愛する友人が勧めてくれた一冊。ラファティによって書かれた宇宙版『オデュッセイア』。 宇宙舟歌 (未来の文学) 作者: R.A.ラファティ,R.A. Lafferty,柳下毅一郎 出版社/メーカー: 国書刊行会 発売日: 2005/10 メデ…

私のギリシャ神話

小説家の阿刀田高が語る、予備知識ゼロから楽しめるギリシャ神話。語り口があまりに軽妙過ぎて発売当初に一度読んでいるのに、面白くあっという間に再読できた。 私のギリシャ神話 (集英社文庫) 作者: 阿刀田高 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2002/12 メ…

『こころ』は本当に名作か

仲良しの書店員さんが勧めてくれた新刊。まさか自分が新潮新書を読むことになるとは思わなかった。 『こころ』は本当に名作か―正直者の名作案内 (新潮新書) 作者: 小谷野敦 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/04 メディア: 新書 購入: 20人 クリック: 56…

魔法のカクテル

エンデの描く、悪い魔術師と悪い魔女の話。魔法のカクテルは悪の限りを尽くすために作られ、それを食い止めようとするのは、動物最高評議会から派遣されたでぶ猫とリューマチ持ちのカラス。 エンデ全集〈12〉魔法のカクテル 作者: ミヒャエルエンデ,Michael …

スナーク狩り(エンデ)

ルイス・キャロルの『スナーク狩り』を、ドイツ語に翻訳したのはミヒャエル・エンデだった。 エンデ全集〈11〉スナーク狩り―L・キャロルの原詩による変奏 作者: ミヒャエルエンデ,高橋康也,丘沢静也 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2002/04/18 メディア:…

鏡の国のアリス

1865年生まれの『不思議の国のアリス』の妹、1872年刊『鏡の国のアリス』の柳瀬尚紀訳。 鏡の国のアリス (ちくま文庫) 作者: ルイス・キャロル,Lewis Carroll,柳瀬尚紀 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1988/01 メディア: 文庫 クリック: 2回 この商品を…

箱ちがい

ロバート・ルイス・スティーヴンスンが継子であるロイド・オズボーンと共に著した、ユーモア文学のような探偵小説。 箱ちがい (ミステリーの本棚) 作者: ロバート・ルイススティーヴンスン,ロイドオズボーン,Robert Louis Stevenson,Lloyd Osbourne,千葉康樹…

カシタンカ・ねむい

2008年に刊行された、神西清訳のチェーホフ短編集。訳者自身による二編のチェーホフ論も併収され、日本におけるチェーホフの紹介に神西清がどれほどの貢献を果たしたか、一望できる一冊となっている。 カシタンカ・ねむい 他七篇 (岩波文庫) 作者: チェーホ…

ブラッカムの爆撃機

スタジオジブリ出版部、宮崎駿の編集による、飛行機とウェストールへの愛が凝縮された一冊。 ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの 作者: ロバート・アトキンソンウェストール,宮崎駿,Robert Westall,金原瑞人 出版社/メーカー: 岩波…

芋虫

昨年角川文庫から発行され始めたばかりの「江戸川乱歩ベストセレクション」、第2巻。 芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2 (角川ホラー文庫) 作者: 江戸川乱歩 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング 発売日: 2008/07/25 メディア: 文庫 購入: 3人 …

ドストエフスキーの初期の短編を集めた、ユーモア小説集。 鰐 ドストエフスキー ユーモア小説集 (講談社文芸文庫) 作者: ドストエフスキー,工藤精一郎,原卓也 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2007/11/09 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 46回 この商品…

草迷宮

稲垣足穂の『山ン本五郎左衛門只今退散仕る』を読んで以来ずっと読みたかった、泉鏡花の代表作。 草迷宮 (岩波文庫) 作者: 泉鏡花 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1985/08/16 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 44回 この商品を含むブログ (28件) を見…

風立ちぬ・美しい村

静かに流れる美しい文章。堀辰雄の代表的中篇、二編。 風立ちぬ・美しい村 (新潮文庫) 作者: 堀辰雄 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1951/01/29 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 229回 この商品を含むブログ (60件) を見る 堀辰雄『風立ちぬ・美しい村…

黒猫/モルグ街の殺人

何となく江戸川乱歩を読んでからずっと気になっていた。たまたま光文社の新訳を古本屋で見つけたので、今回、早速読んでみた。 黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫) 作者: ポー,小川高義 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2006/10/12 メディア: 文庫 …

第二の顔

江戸川乱歩が『探偵小説の謎』の中で紹介していた小説。探してみると、翻訳が何と生田耕作だった。 第二の顔 (創元推理文庫) 作者: マルセル・エイメ 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2008/03 メディア: 文庫 クリック: 5回 この商品を含むブログ (5件)…

エレンディラ

ラテンアメリカ体験第二弾。ガルシア=マルケスが『百年の孤独』と『族長の秋』の間に描いた、あまりにも南米らしい魔術的短編集。 エレンディラ (ちくま文庫) 作者: ガブリエルガルシア=マルケス,鼓直,木村栄一 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 1988/12/…

黒い美術館

かつて白水社から刊行されていた、「マンディアルグ短編集」シリーズの三冊目。だが、原書の刊行年を見ると、これはマンディアルグの第一の短編集である。 黒い美術館―マンディアルグ短篇集 作者: マンディアルグ,生田耕作 出版社/メーカー: 白水社 発売日: …