Riche Amateur

「文学は、他の芸術と同様、人生がそれだけでは十分でないことの告白である」 ――フェルナンド・ペソア         

評価-★★★★☆(大満足)

風味絶佳

先日『蝶々の纏足・風葬の教室』を読み返してから、何だか自分の中で評価が急上昇した山田詠美の短編集。 風味絶佳 作者: 山田詠美 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2005/05/15 メディア: 単行本 クリック: 24回 この商品を含むブログ (310件) を見る 山…

ルリユールおじさん

バラバラになってしまった大切な本を修復する職人、ルリユール。 ルリユールおじさん 作者: いせひでこ 出版社/メーカー: 理論社 発売日: 2006/09 メディア: 大型本 購入: 3人 クリック: 94回 この商品を含むブログ (77件) を見る いせひでこ『ルリユールお…

新ナポレオン奇譚

1904年に刊行された、チェスタトンの記念すべきデビュー長編。 G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚 作者: G.K.チェスタトン,高橋康也,成田久美子 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 1984/07 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブロ…

八十日間世界一周

光文社古典新訳文庫の今月の新刊、SFの祖が実在の科学技術を駆使して描いた、冒険小説の傑作。 八十日間世界一周〈上〉 (光文社古典新訳文庫) 作者: ジュール・ヴェルヌ,Jules Verne,高野優 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2009/05/20 メディア: 文庫 購…

無知

ミラン・クンデラが祖国チェコを舞台に描いた、郷愁の叙事詩。 無知 作者: ミランクンデラ,Milan Kundera,西永良成 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2001/03 メディア: 単行本 クリック: 8回 この商品を含むブログ (7件) を見る ミラン・クンデラ(西永良成…

オデュッセイア

世界最古の文学は、ホメロスの叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』である。『イリアス』はトロイア戦争を語ったもの、そして『オデュッセイア』はその続編たる、英雄オデュッセウスの漂流の物語である。 ホメロス オデュッセイア〈上〉 (岩波文庫) 作者:…

ロミオとジュリエット

今や悲劇の代名詞と化した恋物語。10年程前に一度読んでいるが、その頃とは全く読後感が違って驚いた。 シェイクスピア全集 (〔10〕) (白水Uブックス (10)) 作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1983/01 メディア:…

ゴドーを待ちながら

ミヒャエル・エンデによってルイス・キャロルの『スナーク狩り』との関連性が指摘された、20世紀の戯曲上、最大の問題作。 ゴドーを待ちながら (ベスト・オブ・ベケット) 作者: サミュエルベケット,安堂信也,高橋康也 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2008/…

不思議の国のアリス

ルイス・キャロルによるあまりにも有名な作品の、河出文庫版。文庫にも関わらず、他社とは一味違った豪華な製本が魅力的な一冊。 不思議の国のアリス (河出文庫) 作者: 高橋康也,高橋迪,ルイスキャロル,Lewis Carroll 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日:…

シチリアを征服したクマ王国の物語

イタリアの作家ブッツァーティによる、素敵なクマの物語。 シチリアを征服したクマ王国の物語 (福音館文庫 物語) 作者: ディーノ・ブッツァーティ,天沢退二郎,増山暁子 出版社/メーカー: 福音館書店 発売日: 2008/05/20 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: …

あまりにも騒がしい孤独

松籟社による「東欧の想像力」シリーズの一冊として出された、チェコの作家ボフミル・フラバルの代表作。 あまりにも騒がしい孤独 (東欧の想像力 2) 作者: ボフミル・フラバル,石川達夫 出版社/メーカー: 松籟社 発売日: 2007/12/14 メディア: 単行本 購入: …

二度生きたランベルト

『猫とともに去りぬ』を読んだ時、面白いと思いながらもそんなに重視していなかったロダーリが、私の中で見事な復権を果たした一冊。 二度生きたランベルト 作者: ジャンニロダーリ,Gianni Rodari,白崎容子 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2001/05 メディ…

不在の騎士

『冬の夜ひとりの旅人が』を読んだ時、カルヴィーノの恐るべき技巧に舌を巻いた。一言で言って、知的遊戯である。そんなカルヴィーノの初期の作品、「歴史三部作」の一作。 不在の騎士 (河出文庫) 作者: イタロ・カルヴィーノ,米川良夫 出版社/メーカー: 河…

グレート・ギャツビー

ああ、やばい。読み始めて五分も経たないうちに思った。ああ、やばい。前にこの本を大っぴらにけなしたことを思い出したのだ。「野崎孝の名訳があるのに、わざわざ訳す必要なんてないじゃないか」と公言していた。僕は高校生の頃に、野崎孝訳のこれを読んだ…

夜のミッキー・マウス

「詩集の読み方がわからない」と、人に言われることがある。僕もそんなに読んでないよ、と言いつつ、「好きなように読めばいいんじゃないかな」と答える。俳句や和歌だって詩なのだし、瞬時に全てが呑み込める詩なんて、そうそうない。詩にまつわる叙情なん…

ちくま日本文学 稲垣足穂

ちくま日本文学シリーズの二冊目として手に取ったのは、稲垣足穂。初タルホ。タルホデビューである。タルホイックな世界に、初めて触れた。 稲垣足穂 [ちくま日本文学016] 作者: 稲垣足穂 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2008/05/08 メディア: 文庫 購入…

ディフェンス

大学三年生の時、毎日のようにチェスを指していた。相手をしてくれていた友人がフランスに発ってからは、この素晴らしい習慣は失われてしまっていたが、チェスに対する興味は未だに尽きていない。 ディフェンス 作者: ウラジーミル・ナボコフ,若島正 出版社/…

月光とピエロ

メロディを知らなくても唄い出してしまいそうになる、堀口大學による最初の自作詩集。 月光とヒ゜エロ (愛蔵版詩集シリーズ) 作者: 堀口大学 出版社/メーカー: 日本図書センター 発売日: 2006/02/25 メディア: 単行本 クリック: 4回 この商品を含むブログ (2…

ちくま日本文学 江戸川乱歩

日本文学を全く読んでいない私を導いてくれるであろうシリーズ、文庫版『ちくま日本文学』。ほとんどが一人の作家の短編集となっており、作品の選択には編者たちのこだわりが窺える。それらの一冊として出された、江戸川乱歩集。 江戸川乱歩 (ちくま日本文学…

図書館

2008年10月に刊行されたばかりの、アルゼンチンの愛書家による書物を巡る素敵な随想集。 図書館 愛書家の楽園 作者: アルベルト・マングェル,野中邦子 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2008/09/29 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 27回 この商品を含…

虹消えず

翻訳者である以上に詩人であった堀口大學の、多彩な活動を俯瞰できる一冊。 虹消えず 作者: 堀口大学 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1983/03 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 堀口大學『虹消えず』新潮社、1983年。

観光

2007年より刊行の始まった新シリーズ、「ハヤカワepiブックプラネット」の創刊第一弾として発売された、タイ人の作家による短編集。 観光 (ハヤカワepiブック・プラネット) 作者: ラッタウット・ラープチャルーンサップ,古屋美登里 出版社/メーカー: 早川書…

冬の夜ひとりの旅人が

悔しいとしか言いようがない。読後にどんな感覚に襲われるか、不安に包まれたまま読み進めていた。まさか途中で終わりもしないだろう、と思っていた矢先に、物語は完結した。あまりにも見事に、きめられた。悔しいとしか言いようがない。 冬の夜ひとりの旅人…

影をなくした男

なんてこった、読み終わってしまった。深夜2時にパラパラと捲り始め、気付いたら4時になってしまっていた。 影をなくした男 (岩波文庫) 作者: シャミッソー,Adelbert von Chamisso,池内紀 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1985/03/18 メディア: 文庫 購…

笑いを売った少年

ミヒャエル・エンデ、エーリヒ・ケストナーと共に、ドイツでは三大児童文学作家と遇されているジェイムス・クリュスの代表作。 笑いを売った少年 作者: ジェイムスクリュス,James Kr¨uss,森川弘子 出版社/メーカー: 未知谷 発売日: 2004/03 メディア: 単行本…

女と人形

生田耕作が翻訳を手がけた、フランス文学の傑作。 女と人形 (アフロディーテ双書) 作者: ピエールルイス,生田耕作 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2003/04/01 メディア: 単行本 クリック: 4回 この商品を含むブログ (15件) を見る ピエール・ルイス(生田…

夜の果てへの旅

生田耕作が手がけた、フランス文学の巨峰、セリーヌのデビュー作。 夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫) 作者: セリーヌ,Louis‐Ferdinand C´eline,生田耕作 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2003/12 メディア: 文庫 購入: 11人 クリック: 224回 この商品…

イン・ザ・ペニー・アーケード

友人がミルハウザーをこんな風に評価していた。「トーマス・マンとボルヘスを足して二で割ったような感じ」。どんな感じだ。 イン・ザ・ペニー・アーケード (白水Uブックス―海外小説の誘惑) 作者: スティーヴンミルハウザー,Steven Millhauser,柴田元幸 出版…

お伽草紙

古典や民話を題材にして中期の太宰が著した、新しいお伽噺の数々。 お伽草紙 (新潮文庫) 作者: 太宰治 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2009/03 メディア: 文庫 購入: 4人 クリック: 47回 この商品を含むブログ (77件) を見る 太宰治『お伽草紙』新潮文庫、…

舞姫・うたかたの記

高校生の頃に愛読した「舞姫」を、再び読みたくなり手に取った本。 舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0) 作者: 森鴎外 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1981/01/16 メディア: 文庫 クリック: 13回 この商品を含むブログ (32件) を見る 森鴎外『舞…